BIGLOBEの「はたらく人」と「トガッた技術」

週末を活用して世界一周を達成した注目の“リーマントラベラー”に聞く「休み方改革」とは(前編)

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こんにちは。 BIGLOBE Style 編集部です。

BIGLOBE Styleのオープンを記念して2020年2月13日に開催される「BIGLOBE Style イノベーションミーティング2020」。これからの時代を切りひらくイノベーションや新しい働き方について、注目のイノベーターたちが語り合うトークイベントです。今回は、登壇者の中から、週末を利用して世界を旅するリーマントラベラー、東松寛文さんにBIGLOBE Style編集部がインタビューを敢行。「働き方改革」を超越して「休み方改革」に行きついた東松さんが、どのような過程を経て、今のスタンスに至ったのかを全2回でお届けします。

―――根本的な質問なのですが、リーマントラベラーとは一体何でしょうか。

サラリーマン×旅人のトラベラーの造語です。

サラリーマンをやっていると旅ができない、または旅人をしているとサラリーマンができないと思われがちですが、実体験として上手いこと時間をつかえば旅行も行けるし、仕事も出来ると感じていたんです。

ただ、それ(両立させること)を気持ちよく言える環境って、昔はあまりなかったんです。自分が休んで旅に行くから旅行の話がしづらいんです。だったら、自分のライフスタイルを象徴する言葉として作って、発信しようというのが名前を作ったきっかけでした。

―――元々、旅には行っていましたか?

まったく興味なかったです。興味ないというか、社会人というのは激務で、旅行に行けないものだと思っていました。ぼくは学生時代、4年間アメフトやっていて、引退したときにヤバいと感じたんですね。海外旅行に行っていない、社会人になっちゃったら、ハネムーンまでは海外旅行に行けないんじゃないかと思って。それで卒業旅行は3カ月で3回、旅行の予定を詰め込んで行きました。

卒業旅行は、当時パッケージツアーでヨーロッパ、イタリアに行ったのと、親戚が香港に住んでいたので家族旅行で香港に。あとニューヨーク行きたかったんで友達と一緒にアメリカまで。

そこで旅行に対する想いも静まり、大学を卒業して社会人になりました。そうすると、激務の毎日が待っていました。仕事は基本的に終電まで。その上で、飲み会があったらタクシー帰り。週末も仕事に疲れて夜まで寝ていてそこから飲みに行く、みたいな生活をしていました。でも、それに対して疑問はまったくなく、社会人とはそういうものだと考えていました。むしろ、その中でいかに楽しむかを考えていました。

―――なるほど。いわゆる社会人の洗礼を受けたのですね。

大学卒業近くになると、アメフト仲間は大体留年するんです。みんな、アメフトばっかりやっていて。ぼくは単位を取れていたんですけど、みんなが留年するから、ぼくも留年したかったんです。ただ、ゼミの先生に「いや、大人は楽しいぞ」と言われました。やっぱり学生はお金がないので、その中で遊ぶのと社会人になって自分で稼いで遊ぶのであれば、絶対自分で稼いで遊んだ方が楽しい、と。そういうアドバイスもあり、ぼくは勝手に「大人は楽しいんだ」と思って社会人になりました。

しかし、社会人になってみると、留年した友達たちよりたくさん遊べると思っていたのですが、結局遊べるのは週末だけ。社会人、3年目のゴールデンウィークに社会人初の旅行に行きますが、そこまでは働き詰めの生活をしていました。

ぼくは中高バスケ部で、NBAが大好きでした。ただ、「一生行けないなあ」と思いながらNBAのニュース見ていたら「プレイオフの日程が決まりました」「チケットを売ってます」と表示されたんです。調べてみたら日本円で8千円くらいでした。「あ、安いな」と思いました。チケットを買って日本に届くのであれば、たぶん観に行けないだろうけど、宝物として買っておこうと。

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チケットを買って届いてしばらくするうちに、だんだん「このチケットを使わないのは悪いな」と思うようになりました。そこで勇気を出して、チケットを辞表かのごとく懐に入れて上司の所へ行きました。普通に伝えたらダメだと言われると思い、「小さい頃からの夢だったんです。このNBAの観戦チケットを偶然手に入れたので、1日休みをください」と言いました。そして、ゴールデンウィークでしたが、先輩も後輩も誰も休まない中、自分ひとり有給休暇を1日だけ貰って5日間でアメリカのロサンゼルスに行きました。

その時は「旅に行きたい」という気持ちはなくて、ただ「NBAのバスケが観たい」という気持ちだけでした。しかし、その旅で気づきが3つ生まれました

1つは、ぼくは英語を全く話せないんですけど、片言の英語だけでなんとでもなること。英語ができなくても、海外旅行はできます。

2つ目は、期間が短くても旅行に行けるということ。5日間でアメリカ旅行だったので、実質3泊5日でした。3泊5日でアメリカを楽しむのは無理で、せいぜいバスケ観戦が限界だろうと思っていました。しかし、行ってみたら3泊5日で十分過ぎるくらい。現地の大学のアメフトの練習まで見学できたり、海にも観光名所にも行けました。

3つ目、すごく大きかったのは、人生を楽しんでいる大人がたくさんいたことですね。日本にいる時、平日は会社のために働き、会社のために飲みに行きました。休日も翌週の英気を養うため、会社のために休んでいる。それまではそれで良かったんです。しかし、ロサンゼルスに行ったら平日なのに人生を楽しんでいる大人がたくさんいました。それが衝撃で「あ、こんな大人が世界にはいるんだ」と思いました。それが良いか悪いかは当時まったくわからないんですけど、純粋に、じゃあ他の国はどうなっているのか気になりました。

そして、旅行に英語は必要ないし、短い期間で行けるんだったら行ってみようと思って、2013年から週末に休みを見つけては海外旅行に行く生活を始めました。
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―――旅に出る生活を始めてから今まで、どれくらいの国や都市に行きましたか。

今(2019年12月)時点で、67カ国、146都市ですね。気が付いたら。

―――すごい(笑)。ちなみに、国や都市を選ぶ基準って何かあるんですか。

まず、ぼくは知らないことを知りたいんです。なので、行ったことない所に行くことがすごく好きです。旅行を重ねるにつれて、海外旅行って良いなと思ってきたのは、自分を知ることができること。休みって限られている訳じゃないですか。滞在時間が限られているので、ちゃんと選択するんですよ。やりたい遊びを自分で選びます。そして振り返ってみたら、ぼくは世界遺産などには興味がなくて、現地の人の生き方がわかるところにばかり行っていたんですよ。

例えば、現地の人が行く市場やスーパーマーケットに行ったり、現地の人に聞いて彼らが普段食べているご飯屋さんに行ったり、面白い若者に話を聞いて現地の服屋さんとか現地で流行っているクラブに行ったりとか。観光客が行くベタな所じゃなくて、圧倒的に現地の人たちの暮らしを感じることができる場所に行っていた、ということに気づきました。僕が知りたかったことはそれだったんです。そして、日本で教わらなかった、多様な生き方を知りたいんだと気づきました。

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―――世界一周達成とおっしゃっていますが、これはどういうことなのでしょうか。

サラリーマンだと世界一周できない、というのが世の中の価値観ですよね。実際ぼくもそう思っていたんですけど、やっぱり世界一周したいなと思い始めたんです。2016年に世界をこれだけ見てきたから、世界一周したいなと思ったんですけど、でもまあ、サラリーマン辞めてまでやりたいかというとそうでもない。でも、やりたい、みたいな。

考えてみると、世界一周って言ったって、ぐるっと回るだけだったら2、3日あったら行けると思いました。日本からアメリカに行って、アメリカからヨーロッパに行って帰ってくれば。でも、それを世界一周っていうのはぼくの中では違うな、って思いました。じゃあ、ぼくのしたい世界一周ってなんだろうと考えてみると、ぐるっと回る以上に、世界中のたくさんの国を見ることが本質だと思いました。

そこで、日本にいる時を「トランジット期間」と言い張れば、行って帰って行って帰ってをたくさん繋げちゃえば、世界一周になります。これだったらサラリーマンを辞めずに出来る。だったら言い張ってやってみようと思い、2016年の10月から3カ月間、平日はサラリーマンをちゃんとしながら、毎週末海外旅行に行って、5大陸18カ国、計12回海外旅行して、働きながら世界一周を達成しました。そして、その事実をとにかく言いまくった結果、いろんなメディアに取り上げられました。

後編へ続く

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東松寛文(リーマントラベラー)

1987年岐阜県生まれ。平日は広告代理店で働く傍ら、週末で世界中を旅する"リーマントラベラー"。社会人3年目に旅に目覚め、年間で67カ国146都市に渡航。2016年、3ヶ月で5大陸18カ国を制覇し、世界一周を達成。地球の歩き方から旅のプロに選ばれる。以降、TV・新聞・雑誌等のメディア出演・執筆多数。全国各地で講演も実施。著書に『サラリーマン2.0 週末だけで世界一周』(河出書房新社)、『休み方改革』(徳間書店)。『サラリーマン2.0』は台湾にて中国語版も発売中。