こんにちは。BIGLOBE Style編集部の吉田です。
みなさん、以前ご紹介しましたTechBlog「地味だけど5G時代に向けて目が離せないGSMAってご存知ですか?」はご覧いただけましたか?
今回はその記事の執筆者、茶園篤(ちゃえんあつし)に話を聞きました。3GPP、GSMAという業界団体での標準化活動の経験や、BIGLOBEはどう変化していくべきなのかなどの展望についても語ってもらいました!
茶園 篤(ちゃえん あつし)
コンシューマ事業本部 サービスデザイン2部
シニアエキスパート
2020年3月 中途入社
3GPP、GSMAに参加していました
─── 茶園さんは今年の3月にキャリア採用で入社しました。前職ではどんなお仕事をされていたのですか?
前職のソフトバンクでは標準化関係の業務を担当していて、主にGSMAという団体に参加し、そこで決定されたガイドライン/プロファイル(3GPP国際標準化を実用面でカバーするもの)の内容を社内に持ち帰って、展開、レクチャーをしていました。他にも、3GPP、OMAなどの団体の情報展開も実施していました。
そのほか、モバイルFeliCa、DPI(Deep Packet Inspection)や測位技術などの先行技術調査や商用トライアル/導入、標準化の技術に基づいた内製化の仕様策定・商用化、クラウドCoE(Center of Excellence)のリーダーとしてAWS Summitで発表する機会にも恵まれたり、直近ではクラウドゲーミングの商用提供にも関わったりしていました。
─── 3GPP、GSMAといった携帯電話の業界団体が技術の国際的な標準化を決定しているのですね。
はい。携帯電話の技術って普段意識する人は少ないと思いますが、3GPPやGSMAの枠組みを通して、世界中のオペレーターやベンダーがタッグを組んで技術仕様の策定を進めているんです。
3Gから4G/LTEになりますといったときに、技術仕様がいろいろ変わりますが、裏周りのシステムを問題なく動かすにはどう変えていくべきか、ベンダーの端末をつなぐにはどうすべきかなど事前に把握しておく必要があります。導入する際にスムーズにベンダーと話ができる素養をつくるという意味でも、業界団体で決定された標準化の情報を社内に展開していました。
─── 担当者自身が技術仕様を把握しておく必要があるのですか?
そう疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんね。
例えば、4G/LTEでお客様が利用されるトラフィックを処理するコアNW(EPC:Evolved Packet Core)の場合、コアNWを販売しているベンダー側が技術仕様を把握し、準拠さえしていればよいのではないかと。
全てベンダーにお任せするという方法もあるでしょうが、構築コストが跳ね上がってお客様への提供価格に悪影響を及ぼしてしまう、障害発生時には担当者自身がなにも分からないため手を出すことが出来ず、復旧時間が長引くことによってお客様へ多大な迷惑をおかけしてしまう、といったことにつながりかねません。
このような事態を避けるためには、担当者自身が技術知識を深めて、ベンダー側と対等に渡り合える必要があるわけです。この素養を磨いていくために、技術仕様の内容を持ち帰って理解・議論を深めておくことが大切だと考えています。
─── とても重要な役割ですね。
必要だけど地味なところもあるわけですが、社内ではどんなことで困っているんだろう、海外での先行事例があればどんなところに苦労して解決したんだろう・社内のどんなところで役立ちそうだろう、と常にアンテナを張り巡らしてコミュニケーションを続けることで誰がどんな情報を欲しているのか分かりますし、とりあえずなにか困ったら相談してくれるようにもなります。また、社内外問わずにこういう情報なら役に立つんじゃないかと、情報を自発的に提供してもらえたりもします。とにかく相手の立場や求めていることを掘り出すために、コミュニケーションスキルと忍耐力はとても重要です。
─── 国際的な標準化活動というすごい経験をお持ちの茶園さんがBIGLOBEに入社してくれたきっかけを教えてください。
知り合いに声をかけてもらったのがきっかけですが、今となっては遥か昔にNECの研究所にいたことも影響しているかと思います。もともと、MVNOというMNO(大手キャリア)とは異なる立ち位置にも興味を持っていて、モバイル業界をもっと楽しくするためになにか面白いことを仕掛けられるんじゃないかというところに魅力を感じていました。
ただ、MVNOの立ち位置は魅力的ながら危うさを併せ持っているとも思っているんです。
単に格安で薄利多売だけだと疲弊してしまいますので、新規サービスを作ることにフォーカスをあて差別化を図るなど、生き残るためのプランを考えていかないといけない。そういった観点からも、技術情報をいろいろ発信して役立ちたいと思っています。新規サービスや技術について、一緒に考えられるメンバーをどんどん増やしていきたいですね。
─── 現在は、主に新規サービスの検討をしているのですか?
はい。MVNOとして勝ち残るために、お客様に喜んでいただくために、もちろん社員自身も喜びを感じつつ取り組めるように、いろんな方々と検討を深めていきたいです。
そのほかに、標準化に関係しますが各案件のプロセスの改善にも取り組んでいます。各案件もそうですが、社内ナレッジなども含めて可視化を図っていきたいです。
5Gに向けた取り組み
─── 2020年3月に5Gが商用化されましたが、実際5Gってどうすごいのでしょうか?
まだ、騒いでいるほどすごくはないです。4Gの延長線で5Gが使えるようになっている状態で、ユーザーから見ると速くなったなーくらいの印象だと思います。
現在通信キャリアが提供しているのは、4Gネットワークを拡張するNSA(Non-Stand Alone)と呼ばれる形式です。
ですが、5G本来の進化はSA(Stand Alone)になってからです。そのときお客様のために自分たちになにができるか常に追っておくべきですし、MVNOとしてもSAに対応できるようにしなければなりません。
5Gの良さは単に速くなるだけではなくて、お客様の端末へのレスポンスも格段に良くなりますし、これからのIoT時代に欠かせない大量デバイスの同時接続もできるようになります。エッジコンピューティングといったいろんな技術が実は後ろ側の見えないところで動き始めるのですが、そこの準備が追い付いていないため、今は速いだけというのが現状です。
例えば先述のクラウドゲーミングもそうですが、処理自体がいくら速くてもサーバが遠いところにあれば遅延が大きくなるので、レスポンスが悪くストレスが生じてしまいます。それを改善するひとつとして注目されているのが、よりお客様に近いところで処理をするエッジコンピューティングです。
BIGLOBEではネットワークスライシングといった先進技術にも4Gの今からどんどん取り組んでおくことで、5Gの良さを最大限に引き出せるように準備を進めています。
MVNOとしての差別化
─── MNOとMVNOの違いを分かりやすく教えてください。格安SIMってなぜ安いのですか?
MNOは自前で全国に基地局を持たないといけないので、設備投資にとてつもない資金がかかります。MVNOはその基地局や帯域などの無線通信インフラを借りているので、MNOのような事業基盤がなくても参入できる業界なんです。これだけで格安SIMの提供ができているわけではないですが、MVNOのひとつの魅力にはなっていると思います。ただ先に少し話したように、今後の競争に打ち勝っていくには格安SIMだけでは武器が少なくてリスクが大きいです。将来的に、MNOのサービスにも使ってもらえるようなプラットフォームを提供したいですね。借りているだけだと面白くないじゃないですか(笑)
─── そうしたプラットフォームは、他のMVNO企業との差別化になり得るということでしょうか。
垂直統合型サービスといったように、MNOも含め各社それぞれブランディングしているのはひとつの良さですが、BIGLOBEを前面に打ち出す部分と、あえてその姿を消して意識せずに使ってもらうMVNE(Mobile Virtual Network Enabler:MVNO事業の構築を支援する事業者)に加え、さらにプラットフォーマーになっていくことで差別化をしていきたいと考えます。
意識せずに使っても、裏ではBIGLOBEのIDやサービス基盤が構えている形にしないと今後伸びていきません。ですので、OTT(Over The Top:インターネット上でコンテンツを提供する事業者)がBIGLOBEと組んだら面白いことができそうだと思ってもらえるような差別化をしていきたいです。
単に格安というのではなく、BIGLOBEだったらIDやサービスをうまく連携して新たな世界を創れるんじゃないかとOTTから思ってもらえるように描いていかないと勝てないと感じています。
BIGLOBEがサービス基盤を充実させてていくことで、単に回線提供していたMNOからみても、BIGLOBEのプラットフォームを使えばMNO側自身のサービスもいろいろな広がりが考えられるよねってのはいいことかと。
実際社内では、その差別化というべきものを手掛けているところです。
─── 今後、携帯電話の利用はどのように変わっていくと思いますか?
今もそうかもしれませんが、より生活に欠かせなくなっていくと思っています。いろいろな生活シーンで意識せずに携帯、スマホを使い、ないと困ってしまうパートナーのような存在ですね。もし、そのいろいろなシーンで使えていないところがあれば、それはなぜなのか、もっと使ってもらうためにどうすればよいのか、と掘り起こすことが必要です。提供スタイルもスマホに限らないかもしれません。IoTやFWA(Fixed Wireless Access)など可能性を狭めることなく、お客様のライフスタイルにマッチするものはなにかを探っていきたいです。
一緒に働きたい人
─── 茶園さんの展望をいろいろ聞くことができました!その目標に向かって、どんな人と一緒に働きたいですか?
まず、現状に満足しない人。そして、なんでそれをやっているのか、なんのためにやるのかといった目的を考えられる人とやっていきたいです。それは個々の力を発揮するためにも必要なことですし、スケジュールの立て方ひとつにも関わってくると思っています。
また、コスト意識を身につけることも必要です。お金は決して降ってくるものではありませんよね。はたしてそれは正当な見積もりなのか、以前の案件ではどうだったのか、などコスト意識を高くもつべきだと思います。
あと、転職をお考えの方は、どんな環境でもめげずに逆境に打ち勝てる人、楽しんでやっていける人にぜひ来ていただきたいですね!
BIGLOBEでは、さらなる事業の拡大に向けて一緒に盛り上げてくれる仲間を募集しています。ご興味のある方はこちらの採用情報をご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。