はじめに
コロナ禍で急激な在宅勤務やオンライン授業へのシフトなど、生活環境が一変しステイホームが続いておりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
BIGLOBEも4月より在宅勤務を基本とする勤務体制にシフトしています。
在宅勤務体制に先立って、社員のみなさん全員が在宅勤務できるようにリモート接続のためのVPN装置の緊急増設や、全業務の在宅勤務下での影響の洗い出しなどを準備し、現状9割の業務が在宅で継続実施できている状況です。
のこり1割も全社プロジェクトを立上げて改善のプロセスを回し始めています。
このようなステイホームへのシフトにより、ご自宅での快適なインターネット接続環境ニーズの高まりを受け、固定ISP接続サービスもご好評いただいております。
本日は、「QCDをバランスさせるISPネットワーク基盤運営」と題して、BIGLOBEの固定ISP接続サービスを支えるISPネットワークのお話をさせていただきます。
BIGLOBEのISPネットワーク運営
BIGLOBEは長年ISPとしてネットワークの設計・構築・運営を実施してきました。その中で、お客さまのインターネット・トラフィックは年々増大しています。以下は、総務省の国内トラフィック増加推移のグラフですが、 ①ブロードバンド契約者の総トラフィックは毎年増加傾向にあり、かつ②1契約あたりのトラフィックも同じく毎年増加していることが見て取れます。
図① 我が国のブロードバンド契約者の総トラフィック
図② 1契約当たりのトラフィック推移
※出典:総務省 「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計結果 (2020年5月分)」より抜粋
https://www.soumu.go.jp/main_content/000699741.pdf
この傾向はISP接続サービスを提供しているBIGLOBEでも同様です。
これは、インターネットがみなさまの生活のさまざまな場面で活用されている現れであり、ISP事業者としてとても嬉しく思います。しかし、ネットワーク基盤を担当するエンジニアの立場では、この日々増大していくトラフィックへの対応は、とてもとても大変なことなのです。
私たちは、この増大していくトラフィックに対して、
・お客さまにご提供する快適なネットワーク品質を維持しつつ(Quality)
・新製品・新技術・新機能をタイムリーに導入することでネットワークを増強し(Delivery)
・増加するトラフィックに対して永続的にコスト削減を達成する(Cost)
ことを通じて、ISP接続サービスをみなさまにご提供しています。
BIGLOBEネットワークでは、このQuality、Cost、Delivery をどのようにバランスさせているかを以下にご紹介します。
1. Quality First:快適なネットワーク品質提供
ISPのお客さまに提供する快適なネットワーク品質を維持することは第一優先(Quality First)です。快適なネットワークをご提供するために、ネットワークシステムの冗長性・対障害性・セキュリティ対応をしっかり実装した上で、日々増加するトラフィックに対して十分なネットワーク容量を確保しています。
2. Cost performance:コスパ重視
Quality を確保しつつ、毎年増大するトラフィックに対してコストダウンしつづけるには、ISPネットワークを、よりコスパ良く増強する必要があります。企画・設計・構築・運用のすべての観点でコスパ重視を実現する施策を立案して実施するプロセスを回す必要があります。
具体的には、より帯域単価が安い回線への乗換、よりポート単価が安い製品の導入、さまざまなコンテンツ事業者との接続性の確保などを常に実施しています。
3. Delivery:内製開発
快適なネットワークをどのようにコスパ良く実現するかは、ネットワーク・エンジニアの腕の見せ所です。コスパが良いルータ・スイッチなどの新製品、お客さまの快適なネットワーク環境を実現する新技術などをエンジニア自ら内製開発で迅速導入し、コストと快適性の両立を図ります。
一般的には、QCDは相反する傾向にあり、QCDのバランスを取ることが重要になります。
・ Qualityの高いネットワークを設計するには高いコストが必要となる
・ コストを下げるとDeliveryが遅くなる
・ 色々な機能を迅速に導入しようとすると、開発・運用コストが高くなる
図 QCD
このお互いに相反するQCDをバランスよくネットワークに取り込むために、BIGLOBEでは、BizDevOpsを導入しています。
BizDevOps チームによるQCDバランシング
BIGLOBEでは、ネットワークチームをBizDevOpsで運営しています。
図 BizDevOpsネットワークチーム体制
BIGLOBEではネットワーク設計と構築、運用部門を分離せずに1つのチームとしています(BizDevOps)。これによりネットワークのQCDに責任を1つに集約させることで、QCDのバランスをとる権限を集約させています。
BizDevOpsにより、インフラ企画から設計・構築・運用までカバーすることで、より上位フェーズにフィードバックが効き、QCD効果が最大化します。
つまり、Qualityを設計フェーズで作りこみ、その設計された構成要素をより高いコスパ(C)を実現する新技術・新製品で構築し(D)、運用します。1つのチームで、BizDevOpsを回すことで、QCDのバランスが自然に取られてきます。
チーム内のネットワークエンジニアの皆さんは、新製品、新技術を自らの眼で見極め、自ら手を動かして(内製)、評価し、構築し、運用します。少しでも自分の設計・構築に不十分なところがあれば、運用フェーズで障害という形で自分に返ってきます(フィードバック)。このような下流で起きる障害を未然に防ぐために、より上流の設計や構築に改善のフィードバックを自ら実施することで、QCDのバランスが整っていきます。また、Q,Cは全社組織から定量的にしっかりチェックされる体制があり、こちらもBizDevOpsにフィードバックされます。
このように BizDevOps ネットワークチームが、日々増大するトラフィックに対して新技術によりQCDのバランスを達成し続けています。
BizDevOpsを支えるネットワークエンジニア
1つのチームでBizもDevもOpsも担う訳ですが、これはエンジニア一人ひとりにも当てはまります。自ら、事業課題をどうすれば改善できるか、日々悩み、アイディアを出し合い、有望な施策をトライし、商用環境に導入し、運営していきます。
全国規模のネットワークに対して、このような活動を進めていくと、各エンジニアの皆さんはすごい勢いで成長していきます。
時には難題に行く手を阻まれて出口が見えない様子のエンジニアもいますが、さまざまな技術を駆使しチームで難題を解決していきます。エンジニア個々人もその過程でぐんと成長しています。
1つの事例としてNAT64/DNS64プロジェクトを以下の記事にてご紹介します。
本プロジェクトは、若手社員5名のチーム自ら、技術企画・検証(Biz)から商用に向けた設計・構築(Dev)を経て、実運用(Ops)まで内製にて実施しており、固定接続サービスに対して世界で始めてNAT64/DNS64を導入し、お客さまにお手間をかけることなく快適・安価なIPv6アクセスを幅広く提供できた事例になります。
このようにネットワークエンジニア一人ひとりが、品質とコストのバランスを取りながら最先端の技術を活用し、顧客視点のベネフィットを生み出しています。
まとめ
- 日々トラフィックが増大していくインターネットですが、BIGLOBEではBizDevOpsによるネットワーク運営により、QCDのバランスが取れた快適なネットワークをお客様に提供し続けています。
- BizDevOpsチームでQCDのバランスが取れるのは、運用フェーズから企画・設計フェーズへの迅速なフィードバックが最適化を促すからです。
- BizDevOps はエンジニアの成長も加速させます。