BIGLOBEの「はたらく人」と「トガッた技術」

最後まで残さない――「オーガニック野菜」を食べて、初心に帰る。


「BIGLOBE Style」は、「SDGs」や「働き方」に関する社内外の様々な事例やトピックスもご紹介していきます。今回は、ライターの加藤文徳さんが、コロナの時代に料理を始めたことで得た気づきを執筆しています(本文は2020年12月に執筆)。

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早いもので、2020年が終わる。社会という大きな枠組みから、私たちの日常の生活に至るまで、さまざまな変化が求められた怒涛の一年。

一般的なサラリーマンである私の会社にも在宅勤務制度が導入され、家にいる時間が増えた。
私はこれまで一切してこなかった料理を始めてみたところ、どんどんのめり込んでしまい、食材を買いに出かけることが自粛の日々での密かな楽しみになっていた。

そんなある日、近所のスーパーでふと目にした「オーガニック野菜」のコーナー。
名前の響きは聞いたことがあったけれど、値段が高いというイメージが先行してこれまで買ったことは一切なかった。

しかし、コロナ禍の陰鬱な毎日。ちょっと贅沢してみるか。

そうして初めて手に取り食べたオーガニック野菜は、想像を遥かに超える美味しさで、今まで食べてきた野菜と格段に違った。衝撃だった。

美味しさの秘決はなんだろう。興味が湧いて調べてみると、そこには社会貢献へのヒントがあった。


13億トン……!?

さて、唐突だがこれがなんの数字かわかるだろうか。
「億」も「トン」も普段あまり使わない単位だから、なかなかイメージしづらい。

果てしなく膨大なこの数字は、1年間で「“まだ食べられるのに”食べられることなく捨てられていく食糧」いわゆる「食品ロス」の量だという。

なんと世界全体で生産された食糧のうち、およそ3分の1が廃棄されているのだ(※)。

(※)出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/spe1_01.html

 

そのうち日本では年間約612万トンの食品ロスが発生しており、国民一人当たり毎日お茶碗1杯分の食糧を捨てている計算であるという(※)。

 (※)出典:消費者庁ウェブサイト
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/education/)


そして下記のグラフもご覧いただきたい。日本の家庭における食品ロスの半数以上が「食べ残し」によるものだ。

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出典:「啓発用ポスター/捨ててしまう理由編(平成30年10月版)」(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/pamphlet/

 

お腹いっぱいで食べきれない。この食材は苦手。私もそういった理由で料理を残してしまうことがあるが、初めてデータで客観視してみて、あまりの廃棄量の多さに愕然とした。

 

また食品ロスがこれだけある一方で飢餓に苦しむ地域や人があり、さらには可燃ごみとして処理する際の二酸化炭素排出量は推定で33億トンと、中国・アメリカに次いで3番目の温室効果ガス排出源にもなっている(※)。

 (※)出典:「世界の農林水産 2014年夏号(通巻835号)」
http://www.fao.org/3/b-i4659o.pdf

 

無意識のうちに、自分も地球を痛めつけていたのだ。

こうした個々の無意識から生まれる小さな食品ロスの積み重ねは、環境負荷や経済的負担、飢餓といった大きな問題に繋がると懸念されている(※)。 

(※)参照:政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201303/4.html )

 

そして、捨てられる食糧の半分を占めるのが「野菜類」なのだ。 

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 イラスト出典:産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター
「中学生・高校生・市民のための環境リサイクル学習ホームページ」
( http://www.cjc.or.jp/school/d/d-2-4.html )

 

それならば、最も多い「野菜類の食べ残し」を減らすことが、私たちの生活レベルで実行できる社会貢献なのではないか。そして、オーガニック野菜はそのキーアイテムとなるのではと考えた。

 

オーガニック野菜の定義、ちゃんと知っている?

「オーガニック野菜」や「有機野菜」の名前は一度聞いたことがあるだろう。しかし、その明確な意味合いや定義を知っている人はそれほど多くないのではないか(私もその一人であった)。

「オーガニック野菜」と「有機野菜」は同じ意味だという。具体的な要件は以下のとおりだ。

 

有機農産物とは、化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本として、土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させるとともに、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した栽培管理方法を採用したほ場において、
・周辺から使用禁止資材が飛来し又は流入しないように必要な措置を講じ゙ていること
・は種又は植付け前2年以上化学肥料や化学合成農薬を使用しないこと
・組換えDNA技術の利用や放射線照射を行わないこと
など、コーデックス委員会のガイドラインに準拠した「有機農産物の日本農林規格」の基準に従って生産された農産物のこと

出典:農林水産省Webサイト
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/ )

 

似たような意味合いで「無農薬野菜」もよく耳にする言葉だが、そこには明確な違いがあった。

それは、日本農林規格(Japanese Agricultural Standards)の認定を受けているか否かということだ。

オーガニック野菜はこの規格に則った検査をクリアして初めて世に出せる。

その証として、流通しているオーガニック商品には下記のような有機JASマークが必ず表示されている。

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出典:農林水産省Webサイト
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/

 

上質な味は勿論のこと、厳しい生産過程や国の検査を経て「安心と信頼」が担保された野菜なのである。
化学肥料を利用しないなど、農業の基盤とも言える“土壌”に対する配慮は、生態系が豊かで肥沃な土壌を作る。農地に健康的な土壌が広がっていくことは、農業の持続可能な未来を作るだろう。

私たちの手に届くまでこんなに「手間」と「時間」がかかっているならば、値段が高いのは確かに納得だ。

 

 

「値段」しか見ていなかった自分

オーガニック野菜を認定するJASは、SDGsの解決・寄与に向けた制度の規格化を検討している。

 出典:農林水産省Webサイト
( https://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/attach/pdf/180601a-14.pdf )

 

 JASの取り組みや定める規格の背景に、社会貢献への意識が見て取れる。オーガニック野菜の認定も例外ではないだろう。


「エシカル消費」という言葉がある。エシカル(ethical)の意味は「倫理的な」。

つまり、

「消費者それぞれが各自にとって社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと」

だという。

出典:消費者庁ウェブサイト
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/public_awareness/ethical/about/

 

表面的な観点や目先の利益で物事を考えるのではなく、その中にある倫理的な背景を指針としながら消費生活を行うことである。

これまでの私の買い物の判断基準は「値段」でしかなかった。スーパーでもただひたすら安いものを選んできた。しかしオーガニック野菜の本義を知り、私たちが消費して需要と供給のサイクルを回していくことが農地の土壌を豊かにするという、環境保全への繋がりを実感することができた。


「お得さ」ではなく「社会的意義」を見いだす。

日々の買い物からエシカルさに対する意識を念頭に置くだけで、生活や思考が良い方向に変わっていくかもしれない。

 

“ありがたみ”の再確認

徹底したリアル主義で有名なクリストファー・ノーラン監督が『インターステラー(2014)』で描いた地球滅亡の原因は、ウイルスによるパンデミックでも、天変地異の災害でもない。食糧危機だ。
砂が舞い、荒廃とした大地一面にコーン畑が広がる異様な風景は、なんだかそう遠くない未来のように思えて、恐怖感を覚えた。

こうした地球にしないためにも、食品ロスの現状を理解し自分ごとと受け止めて、日頃できることから変化を始めていくことが大事なのだろう。そういった意味でオーガニック野菜は、自らの行動や食材に対する倫理観を高めてくれる極めて身近な存在だと思う。

そして私自身、オーガニック野菜を食べて何よりも感動したのは「食へのありがたみ」を再確認することができたことだ。ここに一番の価値があると感じている。

食に不自由なく生きてきて、なんとなくその意味が形骸化していた「いただきます」の挨拶。

恥ずかしながら、十数年ぶりに私は両手を合わせ、大地の恵みを心から“いただく”想いで、最後の一口まで噛み締めた。

オーガニック野菜を生活に取り入れたことは、忘れかけていた感謝の気持ちを呼び起こさせ、そういった原点に私を立ち帰らせてくれた。


この歓びが、一人でも多くの方に伝播してくれたら嬉しく思う。

 

(文:加藤文徳、編集:中山明子)

 

 

<BIGLOBE社員の編集後記>

本文中に言及されている「エシカル消費」について、確かに、日頃から考える機会が増えました。単純にその商品やサービスが優れているかどうかではなく、それらがどういう影響を社会に及ぼすか、という視点がこれから重要になるのは間違いありません。BIGLOBEは通信事業も展開していますが、そのサービスが与える影響といった「その先」を見つめて、社会が今よりも良くなるための視点を再度意識する必要があると考えさせられました。あと、個人的には加藤さん同様、コロナ以降は自炊することが多いので、丁寧に食材を使おうと思います。できることをひとつずつ。