フェムテックが救うのは誰なのか。広がる「女女格差」

「BIGLOBE Style」では、「SDGs」に関する社内外の様々な事例やトピックスもご紹介していきます。今回は、ライターの白鳥菜都さんが、「フェムテック」について執筆しています。

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「フェムテック」という言葉をご存知だろうか。生理をはじめとする女性特有の課題を解決するためのテクノロジーのことで、欧米を中心に市場が広がり、日本でも注目が集まっている。
2020年、筆者がよく友人から勧められたものの一つが「吸水ショーツ」だった。ナプキンやタンポンの代わりとして使用することのできる生理用品だ。1日に何回も取り換える必要がなく、繰り返し使用することができる。

吸水ショーツの他にも、月経カップなどもよくメディアで取り上げられていたように思う。これまで、ナプキンが主流だった日本の生理用品市場に変化が起きているのだ。吸水ショーツや月経カップもフェムテックの一種だ。これらのグッズの人気とともに「フェムテック」という言葉も広がり始めているが、それに伴って浮き彫りになる格差も存在する。今回はフェムテックの基礎知識と課題について紹介する。

 

フェムテックとは
フェムテックとは「Female(女性)」と「Technology(テクノロジー)」を掛け合わせた造語で、女性特有の身体的問題を解決するために作られたテクノロジーのことを指す。ドイツ生まれの排卵期予測アプリ「Clue」の誕生とともに、2012年頃から使われるようになった用語だとされている。

フェムテックの世界における市場規模は2025年には5兆円にのぼると予想され、今注目の産業である。主要なグッズとしては生理に関わるものが多い。例えば、前述の「吸水ショーツ」や「月経カップ」、海外では生理痛軽減デバイスの「Livia」なども注目を集めている。また、日本でも多くの女性が使用する生理日予測アプリなどもフェムテックの一種である。

生理に関わるグッズ以外にも、妊活用グッズや産後ケアグッズ、更年期ケアグッズなどもフェムテックとして扱われる。日本国内だけでも2020年冬時点で97のサービスが存在するとされている。(※)さまざまな側面から女性の性に関する問題を解決するためのグッズが増えつつあるのだ。

※出典:Fermata「2020年秋冬 最新国内 Femtech(フェムテック)マーケットマップ発表!

 ( https://note.com/hellofermata/n/n67de6061b478

 
誰のためのフェムテック?
SNS上でフェムテック商品が発売されるたびに話題になっているのを見て、筆者も商品を使用してみたいと思っていた。しかし、実際にさまざまなフェムテックのサイトを調べてみると、少し落ち込んでしまった。

なぜかというと、学生である筆者には少し手を出しにくい価格だったからだ。多くの人の注目を集めるフェムテックだが、無料のアプリなどを除くと、みんなが手を出しやすい値段とは言い難いのではないだろうか。例えば吸水ショーツについて、国内ブランド5社の商品の平均価格を計算してみると、1枚あたり4,640円だ。下着にいくら値段をかけるかは個人差が大きいところであるかもしれないが、筆者にとってはショーツだけに4,640円払う、というのは少しハードルが高かった。

この出来事を通して気になったのが、女性間の格差、いわゆる「女女格差」の存在だ。ジェンダーに関する格差問題を話すとき、男女間の格差、あるいは性的マジョリティと性的マイノリティの間の格差が話題に上ることが多いように思う。しかし、少し視点をずらすと女性間にも格差が存在することが見えてくる。SNS上でフェムテックの効果を称賛する「成功した」女性が登場する一方で、同じ現代社会でフェムテックからはかけ離れた場所で生活を送る女性も存在する。

世界規模で見ると、ナプキンさえ買うことのできない女性は数多く存在している。経済的な理由により、生理用品を買うことができなかったり、生理に関する知識がなかったりする状態は「生理の貧困」と呼ばれる。国際NGOのPlan International UKによる2017年の調査(※)では、イギリスにおいて10人に1人の少女が経済的理由で生理用品を買うことができず、7人に1人の少女が経済的理由で友人から生理用品を借りたことがある、といったデータが明らかになった。

※出典:Plan International UK「PLAN INTERNATIONAL UK'S RESEARCH ON PERIOD POVERTY AND STIGMA」(https://plan-uk.org/media-centre/plan-international-uks-research-on-period-poverty-and-stigma

衝撃的なデータだが、「生理の貧困」は日本でも決して例外の問題ではないだろう。経済的な問題や、親からのネグレクトなど、さまざまな問題によって一般的な生理用品にたどり着くことすらできていない女性が存在している。以前、生理と働き方に関する記事の中でも触れたが、生理にはただでさえ一生を通して数十万円のコストがかかるのだ。

女性活躍が叫ばれる昨今、確かに目立った活躍を見せる女性は増えてきたが、それでもまだ一握りだろう。女性の身体的問題の豊かな解決方法として登場したフェムテックの存在によって、逆説的に、今ある解決方法にすらたどり着けない女性の存在が浮き彫りになっていると感じる。


スタートラインに立つために
このような状況において、まずは「生理の貧困」を食い止めようとする動きが見られ始めている。2020年11月、スコットランドではタンポンやナプキンの無料配布が法律で定められた。公共の施設において、誰でも、いつでも無償で生理用品を受け取ることができる。生理用品の無償配布が法律で定められたのは世界初だ。

日本でも、若者を中心に生理用品の無償配布の試みがあった。慶應大学の学生による、男女両方のトイレに生理用品を設置するキャンペーンや、赤い箱に生理用品を入れて箱ごと寄付する「Red Box Project 」などだ。

フェムテックの広がりによって、女性の身体的苦痛が軽減されることはもちろん望ましいことであるが、その裏側にある女性間の格差は見落とされがちだ。一般的な生理用品、ましてやフェムテックには手が届かない女性の存在にも光を当てることが必要なのではなかろうか。全ての女性がフェムテックという選択肢にたどり着くことのできる未来のために、まずは「生理の貧困」がなくなることがスタートラインなのかもしれない。

 

(文:白鳥菜都、編集:中山明子)

 

<BIGLOBE社員の編集後記>

スコットランドに続き、ニュージーランド、フランスと「生理の貧困」解決へ向けた動きが、ニュースで取り上げられていました。経済的な理由で生理用品が買えず、学校を休まざるをえない子どもがいるという現実があります。生理に関する話題はこれまであまり語られてきませんでしたが、フェムテック市場の拡大とともに日本の社会や企業においても話せる時代に少しずつなってきたと感じます。なんとなく共有しにくかった女性特有の悩みや問題が解決されることで、より女性が活躍できる世界になるのではないでしょうか。

 

 

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