「育児休暇(以下、育休)を取得し、子どもの成長を間近で見守れる幸せを感じました」――そう語るのは、BIGLOBEの営業統括本部 CS推進部 オンラインサポートグループの土井脇 寛 (どいわき ひろし)。
世の中における男性の育休取得率が30%を超える一方で、まだまだ“特別な選択”とされがちな男性の育休取得。そうした中、約2年間という長期の育休を取得し、子どもの成長に寄り添ってきた彼が語るのは、家族との時間の尊さと、それを支えた職場の理解、そしてキャリアへの向き合い方。
育児と仕事の間で揺れるすべての人に届けたい、リアルな体験と気づきのストーリーをお届けします。
「子どもが好き」だから自然と決めていた育休取得
土井脇 寛(どいわき ひろし)
営業統括本部 CS推進部 オンラインサポートグループ
1998年にNECへ新卒入社し、インターネット黎明期からBIGLOBEに携わる。約10年間管理職を務める中、子どもの誕生を機にワークライフバランスを重視。約2年間の育休経験を通じて、仕事と家庭の両立を実践した。現在はCS・AI活用推進を担う。
—— まずは、今までのご経歴をお聞かせください。
1998年に新卒でNECに入社し、インターネット黎明期からこの業界に深く関わってきました。その後、BIGLOBEに転籍してからは、会員獲得とカスタマーサポート(CS)の部門を行ったり来たりするような形で、お客さまにサービスの魅力を届け、インターネットをご利用いただくにはどうすればよいか、といった業務に長く携わってきました。
—— 現在の業務内容はいかがでしょうか。
現在もCS、コールセンターの部門にいます。もともと電話での顧客対応がメイン業務でしたが、今後はAIを積極的に使っていくためにテキストメッセージやチャット対応を担う部門へ異動し、センターのオペレーターが利用するFAQを管理するナレッジシステムを担当すると同時に、コールセンターのAI活用を業務として担当するようになりました。
DX化が加速している分野ですが、いかにコミュニケーターが、お客さまを待たせずにうまく正確に回答できるかといったミッションは変わりません。そのために、AIの力を借りることによってより効率化を実現していくための検証やトライも非常に大きなテーマとして業務を行っています。
—— そんな土井脇さんに、今回のインタビューの本題である育休について聞いていきたいと思います。最初に、制度を取得しようと思ったきっかけを教えてください。
きっかけは単純に、私が子どもがすごく好きだということです。結婚する前、付き合っている人もいない時から、子どもができたら育休を取ろうとずっと思っていたくらいでした。
なぜ子どもが好きなのかは言語化したことがなかったのですが、友人のお子さんと接する機会があった時に「なんて可愛いんだろう」と思えたんですよね。もし自分に子どもができるようであれば、その時間をすごく大事にしたいと考えていたことが、育休取得のきっかけになります。
—— わかります。子どもと過ごす時間はかけがえのない瞬間ですよね。
本当にそうですね!
—— 厚生労働省の調査によると、2023年度の男性育休取得率は30.1%と、前年度から13ポイント上昇し、初めて3割を超えたそうです。一方で、取得期間は依然として短く、約4割の男性が2週間未満の育休しか取得していない状況という調査結果もあります。土井脇さんは2年程取得されていますが、育休をとる際のハードルなどはありましたか?
BIGLOBEは育休を取りやすい環境だなというのは非常に感じていました。私も一度部下が育休を取ることになったことがあるのですが、会社全体の雰囲気として「おめでとう」と歓迎するムードがあります。残った仕事は他のメンバーで考えるから、しっかり育休を取ってくださいという感じで、周りもそういう雰囲気で取得していたので、特に躊躇もなく上司に申し入れることができました。
—— とても素敵な環境ですね。
はい。そのため、取得にあたって何か特別なことをした記憶は特にないんですよね。引き継ぎ書は一生懸命作りましたが、それは部署を異動する際にも行うことですし、ハードルや苦労というのは本当に感じることはありませんでした。もちろん、部署のメンバーにはだいぶ気を遣わせてしまったかもしれませんが、上司からも「この期間はしっかりお子さんを見てあげた方がいいよ」と言っていただき、大変嬉しかったですね。
結果的に2年ほど育休を取得しましたが、これは初年度に保育園に入園できなかったためです。当初は4月に復帰を予定していましたが、その時期に入園可否が決定したため、もう1年延長することを決めました。だいぶ復帰が遅くなり職場には申し訳なかったのですが、長い人生で見れば、この期間子どもと過ごせたことは大変貴重な経験だったと感じています。
「父親になった実感」と芽生えた責任感
—— 育休をこれから取得したいと考えている方もいるかと思います。どのような流れで進めていったのかを教えてください。
まずは、パートナーとの話し合いから始めました。妻は、子育て、特に産後直後や夜間の対応は大変なことも多いだろうからと、夫婦で協力して取り組みたいという思いを抱いていたようです。私自身も同様の考えであったため、意見が一致し、育休の取得を具体的に検討することになりました。
それが、出産予定日の半年ほど前のことです。会社への報告は、直前にならないよう、出産予定日の3~4ヶ月前には行ったと記憶しています。
—— その後、お子さんが生まれた時は、率直にどのような感情を抱きましたか?
ずっと子どもが欲しかったので、父親になったんだなということを強く自覚しましたし、やはり嬉しかったですね。同時に、生まれたばかりの赤ちゃんが生命を維持するためのケアと、心身ともに大変な時期の妻へのサポート、この両面をしっかり支えていこうという決意を新たにしました。大きな責任も感じた瞬間でしたね。
—— 育休は2022年3月から取得されていますね。
ちょうど時期的にはコロナ禍です。生まれたのは2月だったのですが、妻がひと月くらい実家で育てたいということだったので、里帰り中は週末に向こうの実家に通い、二人が自宅に帰ってきたタイミングで育休の取得を調整しました。
—— 実際に育休が始まって、日々の過ごし方はどう変わりましたか。
当然、生活は育児中心になりました。特に新生児の間は夜もなかなか寝られないため、妻とスケジューリングし、交代のタイミングや具体的な対応方法を話し合いながら、二人で協力して子どもの世話をする毎日でした。
例えば、妻が夜から早朝にかけてのミルクを担当する間、私は休息をとり、午前中からは私が子どもの世話を、妻が休息を取る、といった形で進めていきました。
大人の食事の時間も、どちらかが赤ちゃんの世話をし、どちらかが料理を作るというようにスケジューリングするなど、お互い不平不満にならないようにうまく配分しました。当然、1日の生活リズムは変わりましたが、うまく順応できたかなと思います。
—— 順応するために工夫したことはありますか?
Googleのスプレッドシートでスケジュール管理をしていました。何時から何時まで、ここは夫、ここは妻みたいに可視化するイメージです。他には、最初の頃は、離乳食の献立が偏らないように曜日で管理するシートを作ってみたんですけど、だんだん「これはちょっと面倒だな」と思うようになり、やめてしまいました(笑)
独身時代の自由な時間とのギャップ
—— 初めての子育ては全て初体験で大変なことも多かったと思いますが、実際はいかがでしたか?
そうですね。睡眠が細切れで3~4時間ごとに1回起きるとか、寝たようで寝てないような感じが続いたのがはじめは大変でしたね。ただ、0歳の頃は、赤ちゃんの様子を観察していることが多かったので、今動き回るようになって「あの時は、実は大変ではなかったのかもね(笑)」なんて、妻と会話しています。
あとは、やっぱり自分の時間が圧倒的に持てないのは、育児を体験してみて理解できました。独身時代は、ある意味全部自分の時間で、なんでもできるという生活をしてきましたが、今は子どもが起きている時間はもう自分の時間じゃないみたいな感覚があります。それはそれで幸せな時間なんですけどね。
—— 差し支えなければ、独身時代はどのような時間を過ごしていたのか教えてください。
趣味でキックボクシングをやっていたのでジムで運動したり、ふと思い立ったら車に乗って滝を見に行って、帰りのパーキングエリアで美味しいものを食べるみたいな気ままなプライベート時間を過ごしていました。
仕事が詰まってきた時も自由に時間が使えたので、じゃあ今週は土曜日もちょっと仕事をするかみたいに、遅れていた仕事も週末まとめて対応するなどもできました。
—— 育児中は、自分の時間を作るのは大変ですよね。
はい、そうですね。これから子どもが大きくなると、遊び相手として体力を落とすわけにはいかないなと思って、運動の時間を増やしていきたいと考えています。ただ、赤ちゃんの頃は、抱っこしていると自然と腕の筋力や足腰が鍛えられている気がしましたね。以前キックボクシングをやっていたのが、少しは良い影響があったのかもしれません(笑)。多少筋力が残っていたおかげで助かりました。
—— 子育ては大変なことだけではないと思いますが、喜びや楽しさみたいなところはいかがでしたか。
やっぱり、子どもの成長を間近で見守れることですね。それこそ、寝返りができた、ハイハイを始めた、歩き始めた、といった一つひとつの瞬間をそばで見届けられたのは、大きな喜びでした。
他にも、区が主催する離乳食の講習会にも参加し、実際に自分で離乳食を作って子どもに食べさせたりもしました。そうした一つひとつが、やはり貴重な時間だったと感じています。
また、こういった行政が開催するイベントへの参加や、予防接種、子どもが風邪を引いた際の病院受診などを平日に対応できたことも、育休を取得していて本当に良かったと思える点ですね。
—— 育休を取ったことで、子どもの成長に寄り添えたり、育児期に発生するイベントやトラブルにも対応できたりしますよね。
はい、そうですね。あと、この期間は自分自身と向き合う時間も多く持てました。「自分は何をしている時が楽しいのか、気持ちよく感じるのか」と考える中で、子どもと接している自分がとても楽しそうで、喜びを感じていることに気づいたんです。
50代になると退職後の生活も考えたりしますが、自分の心に素直に従うとしたら、子どもと関わる何かを続けていくことが、きっと充実した時間の使い方になるのではないかと思っています。
育休とキャリアの関係 —— 長い人生で見れば貴重な選択
—— 男性が育休を取ることについて、制度を取得してみて改めてどのように感じましたか?
これはもう本当、個人の価値観や家庭の状況など諸々あって、取るべきかどうかは、それぞれの考え方や状況によって異なるというのが前提にあります。
その上で、私としては人生の中で考えたら子どもが育つまでの期間はおそらく一瞬だと思っているので、とてもウエイトが高いものです。今ようやく3歳で、すごく懐いてくれていますが、それもあと数年かなと考えると、この期間を子どもと過ごすというのは、やはり貴重です。
なので、子どもとその時間を大事にしたいという思いがあるのであれば、育休をとることは、人生をより豊かにしてくれるのではないかと私はすごく感じます。
また、男性が女性がという議論になりがちですが、たぶん授乳以外は男性と女性でできることって差がないと思うんですよね。基本的には、育児と聞いて頭に思い浮かべるのは、ママさんが赤ちゃんを抱いている姿だと思いますが、その価値観が変わらない限り、男性の育休取得は広まりにくいのではないかと感じます。
—— まだ世の中では男性が主体的に育児をするというのが珍しいという風潮も残っていますよね。だんだんと変わってきてはいますが。
「イクメン」という言葉一つとっても、おかしいんですよね。例えば“育児レディ”なんて言い方はしませんよね。お母さんが育児をするという前提になっているからだと思います。そうした意識が変わって初めて、男性の育児参画が女性と同じレベルでできるようになるのかなと。
また、男性が育休を取ったと言っても、1週間程度だったという話も聞きます。1週間で何ができるのか、と正直思います。ただ、休職期間中に他の会社の方とたくさん話す機会があって、「今育休でこれだけ取ってるんです」と言ったら、「うちでは絶対それは無理です」という方がほとんどでした。私は正直なところ、BIGLOBEに長く勤務し、この企業文化に身を置いてきたため、世の中の現状に改めて驚かされた次第です。
だからこそ、しっかり育休を取らせていただいたこの会社にはすごく感謝していますし、これからも頑張ろうという使命感のようなものが芽生えました。
—— 育児とキャリアについて考える方もいるかと思いますが、その点はいかがでしょうか?
私はある程度年齢もいっているというのもあって、周りと比べて出世が遅れてしまうといった焦りみたいなものも一切感じることはありませんでした。ただ、20代から30代前半にかけては伸びる人はすごく伸びると思うので、その期間に休むことで周りとの差がついてしまうのではないかと不安に思う人はいると思うんです。
私は、BIGLOBEなら、スキルの問題であれば、復帰後にすぐに追いつき、その差はなくなってしまうと思っています。なので、自身のキャリアを長い目で見た時に、育児期間を仕事だけで過ごしてしまうというのはもったいない。
繰り返しになりますが、在職中のキャリア、もっと言えば人生という長いスパンで考えた時、この育休期間は、私にとって非常に価値のあるものでした。だからこそ、育休を取らなければよかったと感じたことは、一切ありません。
—— 最後に、この記事を読んでいただいた方にメッセージがあればお願いします。
育児にはいろいろな価値観があって、育休を取らなきゃいけないというものでもないと思います。家庭と仕事のバランス、収入面なども含めて、トータル的にどう取得するべきかはご家族で考える話、個々の問題だというのが前提にあります。
その上で、私が子どもとの時間を大切にしたいのは、人生の終盤に何を思い出すかと言ったら、やはり子どもが生まれたばかりの頃の記憶は確実に蘇るだろうと思ったからです。みなさんも、ご自身にとって何を大切にしたいかを考えた時、もし家族との時間を重視するのであれば、ぜひ育休の取得を検討してみてください。それはきっと、人生を豊かにする選択となるはずです。
だからこそ、長い目で人生を捉え、仕事も育児もご自身にとって最適な形で歩んでほしい、というメッセージを送りたいですね。
—— 土井脇さんの想いがとても伝わってきました。本日はありがとうございました!
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