BIGLOBEの「はたらく人」と「トガッた技術」

若手エンジニアにおすすめ!JANOG49会場ネットワーク構築体験談

JANOGの会場ネットワークはボランティアが構築します。次世代育成の側面もあるこの活動に、学生や新人エンジニアを支援する大人枠として参加しました。

はじめに

基盤本部 ネットワーク技術部 前野です。 2022/1/26〜28に開催されたJANOG49 Meetingで会場ネットワークの構築ボランティアスタッフとして活動した内容をご紹介いたします。

社外の方々にも共有したいと思い立ったのは、先日開催されたJANOG50 Meetingに参加したのがきっかけです。 次回のJANOG51でスタッフに応募される方の参考になれば幸いです。

JANOGとは?

大まかに説明すると、 国内のインターネットに関わる方々が集まってインターネットをより良くするために活動していこう、というコミュニティです。

※以下、JANOG | General Information より抜粋

JANOGとはJApan Network Operators' Groupを意味し、 インターネットに於ける技術的事項、および、それにまつわるオペレーションに関する事項を議論、検討、紹介することにより 日本のインターネット技術者、および、利用者に貢献することを目的としたグループです。

年に2回開催されているJANOGのMeetingでは、様々な業界のエンジニアや営業担当の方、学生など多種多様なメンバーが集まって、インターネットをより良くしていくための議論が行われています。 JANOG Meetingでは来場者が利用するネットワーク(会場Wi-Fi)が毎回提供されており、JANOGの運営スタッフと公募で集まったボランティアスタッフによって、Meetingの度に設計/構築/運用されています。

参加のきっかけ

国内にはJANOGとは別に、以下のような地域ごとのオペレーターグループがあります。

  • QUNOG(九州沖縄ネットワークオペレーターズグループ)
  • ENOG(越後ネットワーク・オペレーターズ・グループ)、など

JANOG49は鹿児島での開催であり、QUNOG運営委員の方の「ネットワーク構築の体験を九州の学⽣や若⼿技術者に提供したい」という思いから、若手のメンバーが多数集められました。 また、若手をサポートする役割として中堅エンジニアも募集されていました。

※ 詳細な経緯はJANOG49会場ネットワーク解説(PDF: 1.37MB)をご覧ください。

私は大学時代に九州に住んでおり、上記の発表にあるカンファレンスネットワーク構築のボランティアにて大人の方々に大変お世話になっていたため、少しでも恩を返せればと上司に相談して参加することにしました。

参加の目的

ネットワーク構築ボランティアには、主に以下2つの目的を持って参加しました。

  • ネットワークエンジニアとしてのスキル向上
  • 学生や新人エンジニアの育成支援による業界への貢献

普段の業務では、BIGLOBEの基盤ネットワークの設計/構築/運用をしていますが、 イベントの会場ネットワークのような小規模LANはあまり構築することがないため、 知識の体系化ができる良い機会だと考えました。 また、普段利用していないネットワーク装置に触れられるというのも魅力的でした。

「参加のきっかけ」に書いている通り、スタッフを募集されていたQUNOGの方には学生時代に大変お世話になっていました。 インターネット業界には、「学生時代にお世話になった分は次の世代や若手に返す」というマインドがある(と研究室の教授や私の知っているエンジニアの方は仰っていた)ので、 学生がインターネットに興味を持つきっかけになればと思ったのも動機となります。 ちなみに私がBIGLOBEを志望したのは、上記発表資料に記載のカンファレンスネットワーク構築ボランティアにて、BIGLOBE社員に出会ってその方の人柄に惹かれたのがきっかけです。

JANOG49 会場ネットワークの構成

以下の図は、実際に構築したJANOG49 会場ネットワークの構成図です。

JANOG49 会場ネットワーク構成

JANOG49のホストであるシナプス様のバックボーンネットワークをお借りし、会場で構築したネットワークとVPN接続することで、来場者はシナプス様のネットワークを経由してインターネットへ接続する構成になっています。 また、会場ネットワーク監視用のサーバをKADOKAWA Connected様のネットワーク上に構築し、会期中の通信量や異常を検知してスタッフが対応できるようになっています。

会場ネットワーク構築の際には、ホットステージと呼ばれる準備期間を用意して、 事前に本番と同様のネットワーク構築や試験を済ませておき、設定済みの装置を使って前日や当日までに会場ネットワークを構築することが多いです。

今回のJANOG49 会場ネットワーク構築でもホットステージを実施し、 以下のような役割ごとのチームに分かれて、それぞれの装置の設定や試験を済ませて本番を迎えました。

  • Aチーム:監視システム、可視化ツール構築
  • Bチーム:シナプス様のバックボーン〜会場ネットワーク間のVPN開通
  • C〜Fチーム:会場ネットワーク機器の設定(スイッチやアクセスポイントなど)

※ 実際に使った装置などの情報はJANOG49ネットワーク構成(PDF: 1.62MB )に記載があるので興味がある人はご覧ください

実際の活動内容

私の場合は2021年12月下旬に大人枠(学生や新人エンジニアの教育兼チームの取りまとめ役)としての参加が決定し、 会場内に設置するスイッチをメインで設定するCチームのリーダーに任命されました。

今回のネットワークチームは、次世代の教育も兼ねていたことから人数が多く、 A〜Fの6チームと上位のファシリテータを含めて合計40人程度の大規模な組織となりました。

チームへのアサイン後は、大きく分けて以下の4つのステップで構築を進めて行きました。

  • リモートでの事前準備(〜1/18まで)
  • ホットステージ(1/19〜1/21)
  • 会場設営(1/25)
  • 会期(1/26〜1/28)

リモートでの事前準備(〜1/18まで)

ホットステージや会期に向けて事前準備をするフェーズです。

装置や回線などの設備調達や基本的なネットワーク設計は、ホストであるシナプス様やJANOG運営スタッフの方々が進めていたため、 A〜Fのネットワークチームのメンバーは主に以下のような準備を進めていきました。

  • ドキュメントの読み込み
    • ネットワーク要件、簡易構成図、会場フロア図などを確認して構築するネットワークのイメージを掴む
  • 事前勉強
    • 構築機器のマニュアルやホストのシナプス様が用意してくださったリモートアクセス環境を使って事前に勉強
  • リモートミーティング
    • 顔合わせや準備状況の共有などを実施
    • 12月下旬頃から2〜3回程度(約1時間/回)
  • 詳細設計
    • 担当分の機器へのホスト名割り当てやアドレス割り当てなど

ホットステージ

本番と同じ装置を使ってネットワークを構築し、試験をして実際にネットワークが正常に動作するかを確認するフェーズです。

自チームの担当だったスイッチでは、主に以下のような設定をしていきました。

  • アクセス設定(ローカル、リモート接続の許可)
  • 管理系設定(NTP、SNMP、Syslogなどの管理系プロトコルの設定)
  • ポート設定(ポートVLAN/タグVLAN 、LLDPの設定 、STPの設定、アクセスポイント向けPoE設定など)

なお、ホットステージ開始時点では、上記のような何を設定するかといった項目と簡易的なネットワーク構成図、使用するアドレスなどの最低限の情報しかありませんでした。

そのため、実際の装置への設定については、以下の方法を組み合わせて進めて行きました。

  • 実機のコマンドを見ながら勘で設定
  • マニュアルを見る
  • Webで検索
  • 詳しい人に相談

基本的には上記のように自力で考えながら設定していき、問題や不具合があった際には他チームや上位スタッフに共有・相談する形でホットステージは進んでいきます。 商用環境の構築とは違って、その場で設計や設定を考えながら進めていけるところがホットステージの魅力の一つだと思います。

私は大人枠として参加したため、チームメンバーの学生が自力で設定しているのを見守りながら、何のために設定をしているのか、設定する機能や装置が実際にはどういう使われ方をするのかなどを説明していました。

ホットステージ期間は3日間でしたが、その内訳は以下の通りでした。

ホットステージ1日目

  • 足りない設計を補完したり設定内容を説明したりしながら、学生メインでスイッチの単体設定を実施

ホットステージ2日目

  • スイッチの設定の続きや無線LANコントローラの設定
  • 他チームの装置との結合試験
    • スイッチ間やPC〜スイッチ〜PCの接続によるEnd-to-Endの試験
  • 他チームのお手伝い

ホットステージ3日目

  • アクセスポイントの接続試験、電波測定
  • アクセスポイントへのクライアント接続試験
    • スマホやPCをアクセスポイントにつなげて、インターネット接続ができるか、接続クライアントの認証状態が見れるか、などを確認していく
  • 他チームのお手伝い
  • 事前設営時のチェックリスト作成
  • 撤収作業

予定よりも早く設定が終わって空いてしまった時間には、 学生向けの説明やUTP(LAN)ケーブルの作成などもしていました。

参考までに、ホットステージの様子を載せておきます。

会場の様子

終了ミーティングの様子

前野(左下)が学生に指導しているところ

会場設営(1/25)、会期(1/26〜1/28)

実際に本会場のネットワークを構築・運用していくフェーズです。

会期中はモニタリングシステムを使って異常を検知し、問題が発生した際には原因を切り分けて対処していきます。 プログラム終了後には構築したネットワークを解体し、梱包・配送手配といった後片付けをしてネットワーク構築ボランティアとしての活動は終了します。

残念ながらこの時期にはコロナの波が来ており、私は参加できなかったため、和気あいあいとしているネットワーク構築スタッフのSlackを眺めていました。 途中で障害もあったようですが、適切に対応して無事3日間の運用を終え、3日目の20時頃には撤収作業が終わったようです。

参考までに、以下に設営/会期中の様子を載せておきます。

設営の様子

会期中のモニタリングの様子

おわりに

今回、以下の目的を持って会場ネットワーク構築ボランティアに大人枠として参加してきました。

  • ネットワークエンジニアとしてのスキル向上
  • 学生や新人エンジニアの育成支援による業界への貢献

チームリーダーとしての参加を通じて、主体的に動く力や人に教える力が向上したり、触ったことのない装置を使ってネットワークを構築することでエンジニアとしてのスキルが向上したりと、普段の業務とは違った成果が得られたと思います。

ただ、事前設営/会期に参加できなかったため、構築時や運用時の教育や自身の働きを見せることができなかったことが心残りではあります。 またコロナ禍ということで、夜の懇親会がなかったり、ランチも大人数で行けなかったりと、醍醐味である人との交流があまりできなかったのも残念ではありました。

コロナ禍であっても、工夫しながらわいわい交流できるといいですね。交流を通じて、若い世代に業界の楽しさをもっと伝えていきたいと思います。

今回のように大規模なネットワークを教育目的で構築するボランティアはなかなかありません。しかし、JANOG Meetingでは毎回ネットワーク構築チームを募集しているので、興味がある方はぜひ参加してみると良いと思います。 他社のエンジニアと一緒にネットワークを構築することで、自身のスキル向上だけでなく、モチベーションやコミュニケーションスキルの向上、今後業界を支えていく仲間ができたりと、得られるものがたくさんあるからです。

JANOG49ネットワークチーム活動については、以下のYouTubeでも話されているので、興味がある方はぜひご覧ください。

www.youtube.com

以上です。 最後までお読みいただきありがとうございました。

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