BIGLOBEの「はたらく人」と「トガッた技術」

2025年の崖に備えて

基盤本部 副本部長 大縄 陽一です。

在宅勤務が増え、家庭にいる時間が長くなったので、ふと思い立ち、家の庭にきゅうりを植えてみました。きゅうりは芽を出すとグングン育ち、ほとんど知識も無く、世話をしていない私でしたが、大きな実が1つ、すぐに出来ました。

「おぉ、これならば20~30個くらいすぐに収穫出来ちゃうんじゃないか?」と期待。しかしながら、その後さっぱり実がデキません。よく見てみると、花は沢山咲いて、実の赤ちゃんの様なものが沢山できましたが、その実は大きくならずそのまましおれていたのでした。


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最初にできたきゅうり
茎や葉が繁茂しすぎで
しおれたきゅうり


 YouTube等できゅうりの育て方、収穫方法を確認。自分の庭のきゅうりをよく調べてみると、葉っぱや茎が複雑に重なり合って、枝分かれした先でもたくさんの新しい葉っぱや花が生まれているので、そちらに養分がとられて、きゅうりの実まで栄養が回らないようでした。
「そうか、実を太らせるには、ある程度太い茎に絞って、しっかり太らせる花と実を選択して、余分な茎、葉や花を除いてあげる必要があるのか!」ということに気づきました。
「はっ!」と思い当たりました、「これは2025年の崖問題と似ている!」と。なんのこっちゃと思われるかもしれませんが、たくさんの枝分かれした茎がこれまでのサービス拡大の歴史、そして構成する葉やつるが繁茂し、絡み合って何がなんだかわからない様子は、私には複雑に構成されたシステムと、ブラックボックス化したプログラムコードのカオス状態に似ている!と感じたのでした。

 「2025年の崖」とは、ご存知の方も多い事と思いますが、経産省から2018年9月に発表された以下レポートです。レガシーシステムの維持保守が足かせになり、IT産業の競争力低下による経済損失のリスクに警鐘を鳴らしたものです。

 BIGLOBEでは、25年前にインターネットサービスを開始し、お客様が増えてきた2000年あたりから、SOA(Service Oriented Architecture)思想で設計した業務システムを具現化し、開発とサービス運営をしてきました。 当時の論文

 このアーキテクチャにより、業務のロジックはC(Controller)層に、画面インターフェースはV(View)層に、共通汎用コンポーネント(会員、契約ほか)はM(Model)層にと、しっかり役割を分離してシステム開発を効率的に行えるようにしました。

 しかしながら、20年の間にBIGLOBE事業の範囲も大きく広がり、商品の多様化、販売チャネルやキャンペーン・手数料の多様化、お客様とのリレーションの多様化(様々な顧客の契約状態で、様々な顧客接点でのインターフェース要件が多様化)していき、C(Controller)層、M(Model)層で多くのAPIが作られ、それらの開発、運用知識を持つ社員、パートナーメンバーの高齢化、離脱によってブラックボックス化が進んでいます。

 よって、ブラックボックス化したAPIを、拡張性があり、メンテナンス性の良い新たなAPIに切り替えていくことが必要です。これによって、独自言語、既存システムノウハウの呪縛から解放され、オープンな言語、クラウド技術の活用による開発へ切り替える事ができます。これを具体的に実行するため、現在行われている業務の洗い出し、システムの棚卸を行う必要があります。業務もブラックボックス化されているからです。ただ、「言うは易く行うは難し」でして、これを実現するために、我々は以下の3点に取り組んでいます。

1.エンジニアの獲得と育成

 何をするにも、人が重要!社員が主導しなければ物事進みませんので、2018年度の中期計画で、情報システム系エンジニアの内製化比率を大幅に増加することを提言し、経営幹部に承認をいただき、現在推進中です。これを加速させるため、システム部門内に人財獲得、育成をミッションとする専門組織を立ち上げ、人事部門と協力しながら、スカウトや社外発信(このTechBlogもその組織で立案、立ち上げました)を進めています。  また、育成についても日々試行錯誤をしながら取り組んでいます。習うより行動とアウトプットを重視して取り組んでおり、社員の自主的な活動を推奨(開発合宿、リモートワーク、各種勉強会の開催)し、クラウド関連の教育カリキュラムを作って実施をしています。

2.品質課題の改善

 お客様に対して、サービスが長時間停止したり、誤課金や誤請求を行うような障害は事業継続上のリスクですし、何より技術者として面目ない、という気持ちになります。 また、脱レガシーのパワーを生み出すためにも、障害対応や品質課題に時間を取られないようにしなければならないと考えています。
 BIGLOBEでは2年前より全社横断での品質改善PJ(ゼロPJ:品質事故ゼロを目指す)が発足し、専門組織である業務品質管理部を要とし、全社の兼務メンバーをアサインして、各部門で品質改善の取り組みを強化してきました。結果、昨年度下期から障害件数が大きく減少しております。併せて、業務の見える化が進んだことで、業務の複雑さが品質課題の根底にある事も全社認識されました。今後の改善の方向としては、対症療法ではなく、業務の複雑さを取り除く根本解決を目指しています。

3.レガシーシステムの改善

 最後に、本丸のシステム改善ですが、基本的にはAmazon Web Services(AWS)やSalesforceといった実績あるクラウドの機能を最大限活用し、システムの再構築を進めています。ただし、現状の機能や業務ロジックをそのまま全て移行するのでは、繁茂して手入れをしていない、きゅうりを植え替えるようなもので、移動先でも多くの実を収穫することは期待できません。よって、業務やサービスの整理を事業サイドのメンバーと一体で行い、APIやシステムの責務の整理、再構築を進めようとしております。現在はキャンペーンの企画から実施までのリードタイムを大幅に短縮することを目指し、営業部門と技術部門でPJを作り、業務プロセスや、実装のパラメーターを整理しています。まさに、不要な枝葉を整理し、大きな実を実らせるための活動です。

 さらに、主力の接続回線やオプションサービスの販売システム、これを支える会員や契約の共通コンポーネントの刷新に手を入れていく計画ですが、このテーマは、システム部門だけで考えてもダメな事なのです。事業の戦略とそれに伴うシステムのアーキテクチャを一体となって検討、共感、合意して進めていく必要があります。現在中期計画で、サービス企画部門も交え、このテーマを真剣に議論中です。BIGLOBEはこういった全社横断テーマを議論できる風通しの良い会社なんです!(長いことかかりましたが)。これができたら、2025年の崖を越えて、2030年への橋が出来上がる、と期待しています!

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今後のBIGLOBEの発展に技術の力で貢献する!組織を目指しています。
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