BIGLOBEの「はたらく人」と「トガッた技術」

コロナ禍で急増するトラヒックにネットワークエンジニア達が業界の垣根を超え立ち向かう

こんにちは、南といいます。
BIGLOBEでネットワークエンジニアをやっています。
8月に開催されたJANOG46でCONECTに参加するメンバーとともに「COVID-19インターネット最前線と日本の通信事業者連携」というテーマで講演を行いました。
本日は、この講演の内容とその経緯についてご紹介します。

 

 

インターネットの運用をより良くするJANOG

 

本題に入る前にまず、JANOGからご説明しましょう。

https://www.janog.gr.jp/information/ より抜粋

JANOGとはJApan Network Operators' Groupを意味し、インターネットに於ける技術的事項、および、それにまつわるオペレーションに関する事項を議論、検討、紹介することにより日本のインターネット技術者、および、利用者に貢献することを目的としたグループです。

このようにJANOGでは、様々な事業者・企業・学術団体等、そしてエンジニアだけではなく企画や営業を担当される方等、多種多様なメンバが集まり、インターネットというインフラの運用がより良くなるよう日々議論を行っています。
いわゆる業界コミュニティの一つになるのですが、一種の業界団体と考えていただいた方がイメージしやすいかもしれません。

このJANOGは主にメーリングリスト上で情報交換や議論を行いますが、参加者が一堂に会し議論するJANOG Meetingが年に2回開催されます。
JANOG Meetingも今回が46回目、8月26日から8月28日にかけて沖縄で開催されました。
真夏の沖縄で他組織のネットワークエンジニアと交流する機会を楽しみにしていましたが、残念ながら今回はCOVID-19の影響でウェビナーを中心とする変則開催となりました。
通常であれば講演者全員が現地会場でそろって登壇するところ、今回はウェビナーでの開催となったため、全員が自宅やオフィスからのリモート登壇となりました。
私も自宅から登壇しました。

 

増加し続けるインターネットトラヒックに立ち向かうCONECT

 

では次にこのCONECTとは一体なんでしょうか。
CONECTはCOuncil for Network Efficiency by Cross-layer Technical membersの略称で、正式にはインターネットトラヒック流通効率化検討協議会という名称です。

https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/conect/

総務省>インターネットトラヒック流通効率化検討協議会

インターネットトラヒックとはインターネット上を流れる様々なデータ(動画やSNS、web閲覧等)の流量を指しています。
コンテンツの高品質化や、新たなコンテンツの普及・拡大等により、インターネットトラヒックは増加の一途をたどっています。
これらトラヒックはたとえばネットワーク事業者とコンテンツ事業者等、様々な事業者間を行き交うわけですが、トラヒックが増えゆく中でインターネットの品質を適切に維持・向上させていくためには、このようなインターネットトラヒックの流通に携わる多くの事業者が業界を超えて連携する必要があります。
CONECTはこの課題を解決するために設立されました。
2020年10月時点で37者が参加しています。
こちらも業界団体の一つとご理解いただいて問題ないでしょう。

 

世界中のネットワーク運用者が協力して支えるインターネット

 

さて、このようにコミュニティや業界団体っぽいものが二つ登場しました。
ではなぜ、BIGLOBEがこのような取り組みに参加し、積極的に他組織との連携を進めているのでしょうか。
そこにはインターネットのネットワーク運用独特の考え方もありますので、私の考え方を少し共有しておきましょう。

インターネットは人々の生活を支える重要な社会インフラであると同時に、多くのビジネスを生み出すプラットフォームでもあり、そしてまだまだ多くのイノベーションを生み出す可能性に満ちた全人類の大切な資産です。
このインターネット、世界中の無数のネットワークが相互に接続することで成り立っています。
そこには絶対的な権力を持つ管理者は存在せず、参加者によるボトムアッププロセスで運用ルールが規程され、また各ネットワークは自律・分散・協調の下、運用されています。
絶対的な管理者がいない故にもろい側面もあり、とあるネットワークが不安定になると、その影響がインターネット全体に波及することさえあります。
したがって、インターネットを安定して維持・運用するには、各ネットワーク同士の協力が欠かせません。
仮にビジネス上は競合関係にあっても、インターネットの安定運用には相互協力が不可欠なのです。
そのため、JANOGやCONECTに限らず運用者が集まるコミュニティや業界団体は世界中に数多く存在します。
このような状況の中、私は一人のインターネットエンジニアとして、またインターネット上でビジネスを行い利益を享受している企業の一員として、そしてインターネットの一部を構成するネットワークの運用者として、この世界にただ一つしか存在しない「The Internet」の持続的な成長・発展に貢献していく責任があると常に考えています。

私も会社員ですので、仕事が忙しくて社外活動なんてしている暇がないと感じるときもあります。
ときには、発信する情報が自社の優位性を損ねるのでは、という懸念を抱くときもあります。
しかし、自分・自社のことばかり考えず、可能な限り、インターネットの安定運用と今後の発展に貢献できるよう努めています。
インターネットの発展なくしてBIGLOBEの発展もあり得ません。
今回の活動にはこのような背景が存在します。

 

COVID-19がネットワーク運用に与えた影響とは?

 

前置きが長くなりました。
ここからようやく本題です。
前述の通り、CONECTに参加するメンバーとともに私を含めた計8名で、「COVID-19インターネット最前線と日本の通信事業者連携」というテーマで講演を行いました。
私からはISPという立場で、主にインターネットトラヒックの変化、という観点でCOVID-19がネットワーク運用に与えた影響を紹介しました。

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ウェビナーの様子(左上が筆者)

インターネットは人々の生活に深く浸透しているため、インターネットトラヒックには人々の生活や行動が反映されています。
BIGLOBEは個人や企業のお客さまに対するご自宅・オフィス向けの光インターネット接続サービスの他、BIGLOBEモバイルというモバイルインターネット接続サービスを提供しています。
その中で最も多く利用されているのが、個人のご自宅向け光インターネット接続サービスです。
したがって、BIGLOBEのトラヒックを分析するということは、すなわち自宅における人々の生活の変化を読み解く作業とも言えます。

ではCOVID-19でBIGLOBEにおけるインターネットトラヒック、人々の行動はどのように変化したのでしょうか。
講演で使ったいくつかの資料を使ってご説明します。

 

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平日昼間のトラヒックにはっきり現れたCOVID-19の影響

 

一番の特徴は平日の昼間におけるトラヒックの増加でした。

 

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COVID-19により外出が制限され、3月以降ご自宅で過ごす人が多くなりました。
上記は平日昼間のトラヒック推移ですが、在宅勤務やオンライン授業の影響で自粛期間中に昼間トラヒックが劇的に増えた様子がご覧いただけます。
緊急事態宣言解除(5月下旬)によりトラヒックの減少が見られますが、8月に入ると再び増加傾向となります。
これは夏休みの影響です。
特に今年のお盆は帰省を自粛する人が多かったと思います。
例年は帰省に伴いご自宅でのインターネット利用が減るのですが、今年はご自宅で過ごされる方が多かったのでしょう、逆に増加傾向となりました。

一方で外出する人が減った分、外出時に利用されるBIGLOBEモバイルのトラヒックは減少傾向となりました。

 

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COVID-19によるトラヒック増に耐え抜いたBIGLOBEのネットワーク

 

一部の国ではCOVID-19によるロックダウンの影響等でインターネット回線が輻輳し、インターネット利用が制限されたケースもあったと聞いています。
では日本でもそのような問題が発生したのでしょうか。
結論からいうと、幸いにも日本はこのような問題に至りませんでした。
もちろん、インターネットには様々な箇所にボトルネックが存在するので、一概に影響が皆無だったとは言い切れません。

ではなぜ、インターネットが混雑するといった問題が起きなかったのか、BIGLOBEを例にとってご説明します。
一つ目の理由として、BIGLOBEでは設備や回線の故障に備えてネットワークを冗長に構成しており、定常的に発生するトラヒックの倍以上の設備容量を常日頃から準備している、ということがあげられます。
突発的なトラヒック増加にもある程度耐えることができるのです。
二つ目、実をいうとネットワークはトラヒックのピークに合わせて設計されています。
BIGLOBEにおけるトラヒックのピークは夜22時頃です。
人々が帰宅し、就寝前の時間を利用してネットを閲覧したり動画サービスを楽しんだりしているのでしょう。
今回大きなトラヒック増加が見られた平日昼間はピークから外れているため、結果としてネットワークの品質にはそれほど大きな影響を与えませんでした。

 

ゲーム配信トラヒックがインターネットに与えるインパクト


もちろん、ピーク時間帯にも若干の増加が観測されており、当初の増強計画を多少前倒す必要はありました。
以下がピークトラヒックの推移ですが、平日昼間と異なり、自粛による変動がそれほど表れていないことがわかります。
BIGLOBEでは、お客さまのインターネット利用増により、1年間でトラヒックが約1.4倍ほど自然に増加しますので、この右肩上がりの増加傾向は概ね自然増の範囲と見なすことができます。

 

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さて、この図をご覧いただくと、時々トラヒックが突発的に増えている日があることに気づかれるかもしれません。
図に赤丸で印を付けているところです。
実はこれ、人気ゲームがダウンロード配信された日なんです。

最近のゲームはインターネット経由でアップデートデータがダウンロードされるそうです。
ゲームはその特性上、世界中で同時に配信を開始することが多く、このように配信が開始された日にトラヒックが急増します。
COVID-19によるトラヒック変動も気になるのですが、近頃ではISPのネットワーク運用者にとってこのゲーム配信をいかにスムーズに処理するかが課題となっています。
実はこのようなゲーム配信にどう取り組むべきかについても、前述のCONECTの中で議論が行われています。
CONECT参加者にはISPやモバイルキャリア、ゲーム会社、そしてゲーム会社からの配信をお手伝いする配信事業者も含まれており、どのようにすればゲーム配信のトラヒックを効率的に処理できるか、各社協力しながら議論を重ねています。

 

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このように、ネットワークエンジニアはネットワークの状況を詳しくモニタリングし人々の行動を予測しながら、品質維持・向上に日々努めています。
自社で頑張るだけではなく、ときにはインターネットらしく他組織と連携して、様々な課題に立ち向かっています。

 

協働を通じて成長と楽しさを実感するネットワーク運用の世界

 

簡単ですが、JANOG46で講演した内容をご紹介しました。
BIGLOBEの事例をご紹介することで他組織のネットワーク運用改善のヒントとなったり、より良い運用に向けた議論に結びついていれば幸いです。
また、CONECTのような事業者間連携の重要性の一端もご紹介できたかと思います。
文化の異なる他組織との連携はときに大きな苦労を伴うことがあります。
しかし、多様な人たちとの協働には多くの学びがあり、結果として自身の成長と楽しさを感じることがほとんどです。
今回は触れませんでしたが、このような対外活動には各社員の技術レベル向上を図る、という目的もあります。

BIGLOBEは今後も自らの技術力を高め、そして自らのネットワーク運用に磨きをかけて、お客さまが快適にインターネットをご利用できる環境を提供して参ります。
それと同時にインターネットのさらなる発展に貢献するため、コミュニティや業界団体活動にも積極的に取り組んでいきます。

 

以上です。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

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