BIGLOBEの「はたらく人」と「トガッた技術」

「新しい住まいと働き方」BIGLOBE Styleイノベーションミーティング:オンラインvol.1レポート


 「BIGLOBE Style」が2020年9月24日(木)にオンライントークイベント「BIGLOBE Styleイノベーションミーティング:オンライン」vol.1を開催した。

 

 在宅勤務やリモートワーク、ワーケーションなどが注目される「新しい住まいと働き方」をテーマに、ローカルプランナーの池田佳乃子氏、タレント・ラジオDJの三原勇希氏、株式会社オープン・エー代表で東京R不動産ディレクターの馬場正尊氏、BIGLOBE Style編集長の桑原晴代氏を4人をスピーカーに迎え、モデレーターは映画評論家・中井圭氏が務めた。

 

 

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左から中井氏、池田氏、三原氏、馬場氏、桑原氏

 

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、急な生活様式の変化を余儀なくされた2020年。この世界的な危機を乗り越えた先にある”近い未来の住まい・働き方”を、イノベーター達はどう描いているのか。5つのトークテーマを通して見えてきたのは”ニューノーマルのその先の日本”の姿であった。

 

トークテーマ1:「リモートワークの現在とこれから」

 

中井:新型コロナウイルス感染拡大の影響で生活は制限されていましたが、どう過ごされていましたか?

 

馬場:予定していた出張も全てキャンセルになり、建設現場も含めて全ての仕事がストップしましたね。私の会社では、緊急事態宣言中はリモートワークにしていましたが、宣言が解除された後でも従業員自身に働き方を選んでもらっています。現在も全体の約4割の従業員がリモートワークを選択していて、気分転換をしたい時や対面で人に会いたい、と思った時に会社に来る。そのことが今では「特別感」になりつつありますね

 

中井:リモートワークは”サボり放題だ”という印象があるのですが(笑)。

 

桑原:サボっているとは思っていません(笑)。ただ、従業員同士のコミュニケーションが取りづらくなっている印象はありますね。それでも、社内のリモートワークに対する満足度はとても高い。これからは”働き方を選べること”が企業に求められる条件になってくるような気がします。

 

三原:私もオンライン収録をしましたが、対面の方が良い場面もありましたね。その場の雰囲気で生まれる会話のグルーヴもあるので。でもオンライン会議の普及によって「対面で会うこと=誠意が伝わる」というなんとなく存在していた価値観に変化が起こったのは嬉しかったですね。

 

馬場:マネジメントの立場からすると「リモートワークによって、生産性は本当に向上したのか」という検証をするのが次の段階だと思っています。

 

 

 

トークテーマ2:地方移住と2拠点生活の可能性

 

中井:BIGLOBEが20代〜50代の在宅勤務をしている社会人800人を対象に行ったアンケートによると「在宅勤務が前提となった場合、”移住をしたい”と思っている人」が全体の約4割にもなっています。理由として一番多かったのは「生活費を抑えられるから」となっています。

 

池田:確かに地方都市は、都心に比べて家賃が安いです。移動もほぼ車ですし生活費はかなり抑えられますね。個人的には生活費の次に多かった「自然が近いから」という回答が気になりますね。このコロナ期間で「自分はどういうライフスタイルで生きていきたいか」という本質的なことを考える時間が増えたんだと思います。自然豊かなところに住みたいという気持ちにはとても共感します。

 

三原:私も定期的に自然に触れにいきますね。自然の中にいると気持ちが解放されて「またお仕事がんばろう」と思えます。

 

桑原:地方に移住したいという社員もいますが、企業側が「地方に住んでいる方を採用する」という流れも生まれてきています。見る景色が違うことで生まれてくる”新しい発想”を重視した働き方の展開が期待されているんです。会社としても時代に適応した制度を作っていかないといけないと思います。

 

中井:リモートワークによって、2拠点生活も今後より進んでいくのではないかと思います。僕の友人もどんどん東京を離れ始めています。池田さんはすでに2拠点生活をされていますが、どうでしょうか。

 

池田:私は今、別府8割・東京2割という割合で2拠点生活をしています。住まいが2拠点あることで、自分の中のバイアスの偏りがなくなり、バランスが整う感じがするんですよね。

 

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「幅広くいろいろな人との出会いがあることも2拠点生活の魅力」と語る池田氏。

 

 

 

池田:東京では高円寺にある「高円寺アパートメント」に住んでいるのですが、そこは馬場さんが設計されたんですよ。広い芝生があって、住居では小商ができます。もちろん商いは無理にしなくても良いので、住む人のライフスタイルに合わせた生活ができます

 

馬場:「高円寺アパートメント」は”地域の庭にしたい'’と思って作ったんですよ。これまでは「家は家、オフィスはオフィス」とそれぞれの空間が区切られていましたが、コロナによってその区切りは崩壊してきています。「住みながら小商いができて、それが社会とのインターフェイスになる」という、僕が想像した以上のライフスタイルが拡がっていて泣きそうです(笑)。

 

個人的には大学の在り方もドラスティックに変わったと思います。コロナの影響で前期の授業は全てリモートで行いました。そこで、例年はレポート提出の演習課題を動画で提出するようにと指示したところ、提出物のクオリティがいつもより格段に高かったんです(笑)。環境の変化が新しいクリエイティビティにつながった結果なのだと思いました。これまでは地方都市が教育的に不利だと思われていましたが、その概念はリモートの普及によって壊れるかもしれない、そういう実感を得ました。

 

 

トークテーマ3:「ワーケーションは地方を活性化するか」

 

中井:そもそもワーケーションとは何でしょうか。

 

三原”ワーク”と”バケーション”ですよね?ワーケーションではどちらが大事なんでしょうか??これまでは「プライベート」と「仕事」は完全に分けたいと思われていた気がします。

 

池田ワーク重視型、バケーション重視型、どちらもあります。バケーション重視型は、サーフィンや山登りなどのアクティビティーをメインにすることが多いです。ワーク重視だと、温泉地・キャンプ場などの、お風呂が温泉になったり、仕事場が屋外になったりと、日常が部分的にアップデートされている環境が向いているのだと思います。非日常を感じるとクリエイティビティが出てくる傾向が強い。これはワーケーションによってもたらされる産物だと思います。

 

中井:先ほどとはまた別のアンケートで「ワーケーションをしてみたいか」という質問もしています。すると、回答者1500人のうち、6割以上の方がワーケーションをしてみたいと答えているんですよ。

 

三原:どうせ働くなら、楽しく働きたいですよね(笑)。

 

池田:去年、別府の「鉄輪温泉」という地域に湯煙が見えるワーキングスペース「a side 満寿屋」をつくりました。当時はワーケーションという言葉はありませんでしたが、湯治場のコワーキングスペースとして人気になりました。去年9月には、様々な企業の方に集まってもらい3泊4日のワーケーションで使用していただきました。すると普段関わらない業界の方といる中で新しいビジネスの種が生まれたり、湯治によって体の不調が治ったという方もいたんです。

 

中井:鉄輪温泉の中にオフィスがあって、温泉に入りつつ「仕事でもしてみるか」という感覚で働かれているんですか?

 

池田:まさにそうです。鉄輪温泉は狭い温泉地域なので、宿・カフェ・レストラン・仕事場がそれぞれ地域内に分散しています。その特徴を活かして、馬場さんが提唱されているエリアリノベーションという考え方に沿って地域全体を盛り上げているところです。

 

中井:エリアリノベーションとは、何でしょうか。

 

馬場個別のリノベーションが同じエリア内でポンポンと出てくる。するとエリア全体がリノベーションされたようになり、どんどんその地域自体が活性化してくる。点と点がつながって面になるイメージです。これをエリアリノベーションと定義しています。エリアリノベーションでは最初のクリエイティブ、”最初の点”がその地域全体の雰囲気を決めるほど重要です。

 

中井:三原さんはよく群馬県のみなかみ町に行ってらっしゃいますが三原さんが”みなかみ町の最初の点”を打つのも良いのではないでしょうか?

 

三原:みなかみ町が好きすぎて、みなかみ町のために何かをしたいという気持ちが強くなっているので......ありですね。

 

一同:(笑)

 

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みなかみ町に魅了され、定期的に訪れては心身共にリフレッシュしているという三原氏。

 

 

 

馬場:それとワーケーションをするときに重要なのは、ネット回線と環境整備だと思います。リラックスしたバケーションモードから仕事への切り替えが瞬時に出来る環境が整っていることがワーケーションを可能にします。

 

池田:確かに、別府で仕事をしていても山道に入ったりすると回線が悪くなったりしますね。でも地方は移動時間が長いのでその時間を有効に使いたい。回線環境が改善されると、働く環境としてとても良いなと思います。

 

中井:ワーケーションの課題として、技術革新以外で地域性や組織上の問題もあったりするのでしょうか。

 

池田:企業で「ワーケーションします」と言ったときに、”海が見える”、”温泉がある”だけでは会社の決裁が落ちない気がします。企業側からは「海が見える」+αの何かを求められているのではないでしょうか。別府を例にすると、別府には大学が3つあり留学生も非常に多い。アウトバウンド向けの企業は、その留学生とコミュニケーションを取りたい、という理由で別府でインターンシップを開催していました。その為にワーケーションが利用されていましたね。

 

 

トークテーマ4:「公共R不動産の取り組みについて」

 

馬場:廃校や公園などの公共施設を民間企業とマッチングする、それが公共R不動産です。沼津では「泊まれる公園”INN THE PARK”」という施設を運営しています。元々は古い公園なのですが、敷地内にいくつか宿泊施設があり、遊んだ後にそのまま泊まれるという仕組みです。あまり使われていない公園でも、例えばカフェが1つあるだけで公園がみんなのリビングみたいになると思うんです。そういう空間活用のお手伝いをしています。

 

中井:現在、国内で使用されていない公共施設は結構あるのでしょうか?

 

馬場:山ほどあります。日本では毎年500校程が廃校になっているんですよ。あとは公共機関では維持ができなくなった公園なども沢山ありますね。そういうだだっ広い空間をどうクリエイティブに使うか、というアイディアが求められる時代がこようとしています。

 

三原:私もランニングコミュニティを運営していますが、活動する場所がなくて困っていたので公共R不動産のサービスはぜひ使ってみたいです。

 

馬場:実は今、会社ごと地方都市に拠点を移す動きも増えてきています。公共R不動産にも何件か問い合わせがありました。企業の拠点は地方都市にあり、サテライトオフィスを東京に持つという考え方も出てくるでしょうね。地方都市が拠点になると雇用が生まれ、経済も回り始める。その地域にとっても良いことが沢山ありますよね。

 

 

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「”同じ場所に集まって仕事をしていたのはたったの100年だけだった”と言われる時代が来るかもしれない」と予想する馬場氏。

 

 

 

トークテーマ5:「採用に求められる住まいの制度」

 

中井:「就職・転職を考える際、就職場所として在宅勤務やリモートができることは重要か」というアンケートについてはかなり多くの人が「重要だ」と考えていることがわかりました。

 

桑原「在宅ワーク」と「リモートワーク」が選べることがとても重要になってきていますよね。コロナが落ち着いた後も、個人の働き方に寄り添った環境・制度が整備されていることが重要だと思っています。それと同時に「会社に来ることが働くこと」という考えを改める雰囲気作りも大切ですよね。今後はそういう改革が出来る会社が就職・転職で選ばれていくのだと思います。

 

 

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「各界で活躍されているエキスパートのみなさんにお話を聞けて、企業における改革への勇気をもらった」と語る桑原氏。

 

 

 リモートワークは、住まいと働き方の可能性を無限大に広げた。自宅にいながら仕事が出来るのはもちろん、全国各地に拠点を置くメンバーでワークチームを構成したり、はたまた海の上から会議に参加したりと、働く場所とライフスタイルを自由に創造できる時代になった。この加速し続ける”当たり前の変化”に、個人は、そして企業はどう向き合っていくのか。私たちは”ニューノーマルのその先”のライフスタイルを、もっと自由に、もっと大胆に発想して良いのかもしれない。

 (文/小野 怜)

 

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