BIGLOBEの「はたらく人」と「トガッた技術」

5G時代に向けてモバイルサービス基盤を全面的に仮想化 ~ネットワークの仮想化でお客様に安定とワクワクを提供~

 こんにちは。BIGLOBE猪俣です。
BIGLOBEモバイルをはじめ、ネットワークの企画・開発を担当しています。
今回は商用化に成功した仮想化ネットワークの取り組みについてお話ししたいと思います。

2020/11/18プレスリリース www.biglobe.co.jp

ネットワークの仮想化とは

 突然ですが、”仮想化ネットワーク”って聞いてどんなことを想像しますか?
VPN、VLANは馴染みのある方も多いのではないでしょうか。
頭に”Virtual”が付くので仮想のネットワークを意味しますが、BIGLOBEが創るモバイルネットワークの仮想化は違います。

 皆さまが普段お使いになられるスマホのネットワークの裏側では沢山のネットワーク機能が働いています。 これらが密接に連携しあって”どこでも安定してインターネットに繋がる”を実現しているのです。

 具体的に言うと10種類ぐらいのネットワーク機能や制御システムの集合体なのですが、 従来はそれぞれの特性に応じたメーカー専用のハードウェアで構成していました。
今回お話しするモバイルネットワークの仮想化はこれら機能やシステムを汎用のハードウェア上の仮想マシンとして構成することです。

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仮想化のメリットとは

 では、専用のハードウェアではなく汎用のハードウェアで動かすことでどんなメリットがあるのでしょうか?

 一つは部品を共通化することで得られるコストダウンが挙げられます。
しかしながら、こちらのメリットを享受するには相当の規模があることが求められます。
大手の通信キャリアではとても有効ですが我々の様なMVNO事業者にはすこし厳しい目標です。

 では何故BIGLOBEが仮想化に取り組むのか?

①故障が発生した時に簡単にコピー(移動)で復旧させることができ、 データセンターに駆けつけてハードウェアの交換作業が不要になること。

②新しい機能を追加する時にハードウェアの工事が不要になることでスピーディにサービス提供ができること。

③仮想化×ネットワークスライスで構成し、スライス選択機能(※図中SSF:Slice Selection Function)でニーズに合わせた適切最適なネットワークにルーティングできること。

 特に③のスライス選択はもともと5Gでの要素技術なのですがBIGLOBEではこれを応用し、4G LTEのMVNOモバイルコアネットワークに適用することに成功しました。
お客様のニーズに合わせて最適な構成のネットワークを選択できることが特徴です。将来的に新たなサービスを追加する場合はソフトウェアの更新で実現したり、増設時はスライスで標準化した設計でコピーして増やすことが可能になりました。サービスを提供しながら必要な変更をネットワーク全体に影響することなく素早く、柔軟に行えることがメリットです。
装置(ソフトウェア)の不具合や障害が発生した場合に影響範囲を極小化できることもポイントです。

 BIGLOBEモバイルではエンタメフリー・オプションをはじめ様々なサービスをご提供していますが、少人数でも工夫を凝らしてバリエーション豊富なサービスをご提供するためにこれらの仮想化やスライシング技術導入に積極的に挑戦しています。

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品質が重要

 仮想化をどの様に実現しているのか少し具体的にお話しします。
最近のインテルx86(Xeonプロセッサ)ベースの汎用サーバはCPUコア数が飛躍的に増え、 また、ネットワークカード(NIC)のパケット処理性能も大幅に向上してきました。
加えて、これまでメーカー各社が専用機で提供してきたネットワーク機能について多機能化や開発効率化のためソフトウェア化が進んでおり、中にはLinuxで動いている機種も多く存在します。

 この様な背景でネットワーク機能を汎用サーバ上で遜色なく動かすことが比較的簡単になってきました。ただし、動くことだけでは安定した品質でご提供できるわけではありません。通信品質や性能を引き出すために様々な工夫をしています。

例えば故障に備えて構成を徹底的に冗長化をしています。

  • CPU、メモリ
  • NIC、スイッチ
  • ディスク
  • 電源
  • ラック
  • 回線、ケーブル

などなど

 また、故障した時に予備のサーバへコピー(移動)で復旧させるために、 どのサーバに移動しても一様に機能・性能を確保するため、すべてのサーバーを共通な設計にしています。

 ちなみに、故障時にコピーや移動を行う動作をヒーリングと呼び、一部では自動でヒーリング操作が行われる様に設定しています(オートヒーリング)。

まとめ

 今日ではネットは空気のように身近な存在になりました。
インターネットに繋がるワクワクを味わえたのも過去のものです。
長年ISPとしてインターネットを支えてきたBIGLOBEですが、 ネットが当たり前の世界で、いつでもどこでもネットを楽しめていること、 これらを支える通信インフラをこれからも安定して運営していくのがBIGLOBEの使命です。

 余談になりますがここ数年で無線機(無線基地局)の仮想化について標準化の議論が進んできました(OpenRAN/O-RAN等)。既存の周波数や基地局設備を持たない新興キャリアなどは積極的に採用している動きもあります。

 近所の電柱やビルの屋上に設置される基地局の中身がサーバーに置き換わるのも目前です。我々の間近(エッジ)でコンピューティングリソースが広く利用可能になると、今までできなかったサービスが実現する可能性を秘めています。5Gと合わせてMEC(Multi-access Edge Computing)から目が離せません。

 今後も新しい技術に積極的に取り組んでワクワクするサービスを作っていきますのでご期待ください。

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