パラレルキャリアって何だろう?vol.1 林健太郎さん(映画プロデューサー/企画作家)

「BIGLOBE Style」では、「新しい働き方」に関する社内外の様々な事例やトピックスもご紹介しています。今回は、パラレルキャリアをテーマに、映画会社でプロデューサーをつとめながら、会社外で劇団を立ち上げ運営する林健太郎さんにお話を伺いました。

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パラレルキャリアって何だろう? 

「本業とする仕事の他に、社会的活動の場を持ち、積極的に参加・従事する」ことをパラレルキャリアと言います(出典:新語時事用語辞典)。
社会的な活動の場を広げることによって、人脈・スキルの拡大や、充実度の向上が図れるというメリットがあると言われています。

誰しも悩むキャリアのあり方。
若くして起業家になる人、フリーランスとして働く人、副業で活躍する人、ボランティア活動に従事する人。会社に所属する以外にもキャリアの描き方は十人十色です。
さまざまな働き方が認められてきた昨今であるからこそ「ロールモデルの不在」を感じる人も多いようです。これはとても同時代的な悩みではないでしょうか。

自分のキャリアを考えるうえで、まずは選択肢を知るためにさまざまな人のキャリアについて聞いてみたい。そんな筆者の想いから、この連載ではユニークなキャリアを描いている方にインタビューを実施しています。
第一回は映画会社に勤めながら会社外でも劇団や映画のプロデュースを手掛けている林健太郎さんにお話を伺いました。

 


林健太郎 映画プロデューサー/企画作家

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1993年生まれ。映画プロデューサー/企画作家。映画会社に勤務する傍ら、2020年4月に自主企画としてフルリモート劇団「劇団ノーミーツ」を立ち上げ。主宰として全ての長編公演、「HKT48、劇団はじめます。」プロジェクトなどの企画・プロデュースを担当。2020年度ACC賞クリエイティブイノベーション部門ゴールド受賞。他プロデューサー作品として映画『どこへも行けない僕たち』、短編映画『純猥談 触れた、だけだった』など。(ポートフォリオサイト

 

 映画会社での活動と企画作家としての活動

-現在の活動内容を、社内・社外それぞれについて教えてください。

会社では、直近まで演劇の劇場に所属し営業やチケットもぎりの業務を行っていましたが、最近映像やゲームを制作する部署に異動し、プロデューサーをやっています。
社外でも映画・映像制作をしています。現在はリモートで演劇を行う「劇団ノーミーツ」を主宰しています。以前は、ラジオドラマを作ったりもしていました。 

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劇団ノーミーツ公演『門外不出モラトリアム』( https://nomeets2020.studio.site/
-どのようにして、こんなに沢山の活動をするに至ったのでしょうか?

「面白いものを作りたい」という想いが常にあります。会社員一年目で映画制作の部署にいたんですが、大きな組織なので一つの映画を作るまでに長い期間を要することが分かりました。最初から最後まで1本の映画をプロデュースしてみたくて、自主制作で映画を作ってみることにしました。もちろん会社という組織だからこそ出来ることもあり、会社ではできないことは会社の外でやる、という棲み分けになっているように思います。
会社の外で活動を始めたことは大きな決意などがあったわけではなく、自分の中でスムーズに出てきたアイデアでした。  

 

きっかけは学生時代に

-やりたいと思ったことへのモチベーションの高さを感じます。学生時代はどんな活動をしていましたか?

留学をしていた頃に、ロンドンで日本映画祭を実施しました。
学生の頃から、「興味があることは実行してみる」という性格でした。何から始めたら良いのか、どこでやるのか、どうやって宣伝するのか右も左もわからない中、周りに「映画祭をやりたい」と言ったところ、一緒に留学していた仲間が面白がってくれたり、留学先の先生からイベントスペースを紹介してもらったりしました。日本企業に協賛もいただけて、たくさんの人に支えられて実現できました。
「やろうと思えば何でもできるかもしれない」と考えるきっかけになりました。

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映画祭の様子
-とても活動的な学生生活を送りながら、卒業後はどんなキャリアを思い描いていましたか?

学生の時には自然と、映画会社に入ること以外の選択肢は考えていなかったです。そのときは社外でこんなに活動するとは思っていませんでした。

 

会社の中と外で活動することについて

-社内・社外の活動のバランスはどんな割合でしょうか?

感覚としてはどちらも100%です。しかし時間的な制約はもちろんあるので、「会社で使う時間は削らない」と決めて社外の活動を調整しています。色々と企画が並行していく中で、バランスをとることも最近は考えなければと思っています。


-社内外のキャリアが相互にいい影響を及ぼしていると思ったことはありますか?

はい、たくさんあります。それぞれの場所で関わる人の価値観には同じところも、違うところもある。「社外の活動ではこうだったから今度はそれを社内の活動で活かしてみよう」ということもあればその逆もあり、相互に影響していると思います。
最近は劇団ノーミーツの活動に関して初めて会社内の先輩に声をかけていただき、会社とノーミーツがコラボした企画を実施したこともあり具体的に相互作用し始めたことは嬉しかったです。これから、さらに増やしていきたいです。

 

原動力とキャリアに対する想い

-本当に活動的でいらっしゃるなと感じるんですが、この原動力はどこから来るんでしょう?

「自分が思い描いている妄想(企画)を実現する」か、「一緒にやりたいと思える人と一緒に仕事をする」かという二種類の起点があるのかもしれません。
例えば劇団ノーミーツの企画で、HKT48というアイドルグループが企画・音響・演出など全てメンバーで担当するというものがあります。これは、「アイドルはパフォーマンスのみに留まらないクリエイターなのではないか」という自分の想いと仮説をきっかけに、企画をスタートさせました。
 それに対して、映画制作は「同世代でこんな才能がいるんだ」と、世の中の人に広めたい気持ちと、その才能と共に生涯に残る作品を作りたいという想いが一番にあります。

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『HKT48、劇団はじめます。#劇はじ』( https://twitter.com/hkt48_gekihaji
-林さんは、妄想を具現化する力や周囲を巻き込む力にとても優れていますね。

誰かと何かを一緒に作りたい人は思ったより多いんだ、と社会に出てから気づきました。会社外で初めて一本の映画を制作した後、映画に限らず幅広く作品を作りたいと思い、SNSで「一緒に映像作品を作ってくれる人を募集!」とツイートしたら、80人くらいから連絡を頂いて。これまでの実績も映画会社に所属していることも記載せず、ただ発信しただけで色んなジャンルの方から連絡がきました。全員にお会いしたのですが、皆さん自分と同じように「どうすればいいかわからないけど何かをやりたい」と思っているのが大きな発見でしたね。本当に大切なのは一歩目を踏み出すことなのかもしれません。

 

-自身や周囲の同世代のキャリアのあり方について想いはありますか?

会社外の活動は自分で勝手にやることだから、「モチベーション」や「維持」というキーワードは自分の中になくて。本当に心の底から「やりたい」という気持ちが大きいだけなんです。「パラレルキャリアを歩もう」などと思っているわけではなくて、たまたま自分は趣味と仕事が一致していて興味の赴くままにやっているだけです。
会社は会社、プライベートはプライベートと割り切って充実させる生活も素敵だと思います。何者かになる必要なんてないと思うんです。「自分自身にとって幸せとは何か、何をやったら幸せか」を考えることが重要なんじゃないかと思います。
 

-今後どのように活動していきたいか、構想があれば教えてください。

来年は映画を一本撮ることに集中したいと思っています。自分が心から一緒に作りたいと思う同世代の監督と作りたいと思う映画を作りたいです。これは社外での活動になるのか社内での活動になるのかまだ分かりません。
今は一度活動を立ち返って、一つ作品を作るタイミングなのかなと思っています。

――林さん、ありがとうございました。

 

林さんのお話を聞いて特に印象的だったのは、「社外」「社内」の枠組みを区切っていないことでした。

「自分が思い描いている妄想(企画)を実現する」、「一緒にやりたいと思える人と一緒に仕事をする」。心の底から湧き出てくる活力を元に突き進んだ先に、たまたま会社という組織とそれ以外の場所という2つの受け皿があったのでしょう。

新しい働き方は、それ自体が目的ではなく、あくまでもやりたいことを実現するための方法であるということを忘れないようにしたいと改めて感じたインタビューでした。
同時に会社という組織以外の場所でも、自分の中から湧いてくる活力があるならば、それを拾い上げて膨らませる挑戦ができる土壌は確実に広がっていることを嬉しく思います。

今回は映画プロデューサー/企画作家の林健太郎さんにお話をお伺いしました。林さんの活動は以下よりご覧いただけます。

 

劇団ノーミーツ公演「それでも笑えば」(2020年12月26日〜30日上演)

no.meets.ltd

 

『HKT48、劇団はじめます。#劇はじ』

spice.eplus.jp

 

(インタビュー・文:藤木美沙、編集:中山明子)

 

 

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