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ESG投資とエシカル消費は似ている?企業の社会的責任が気になる人に知ってほしいESG投資について

「BIGLOBE Style」では、「SDGs」に関する社内外の様々な事例やトピックスもご紹介していきます。今回は、ライターの竹内瑞貴さんが、「ESG投資」について執筆しています。

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(elenabsl/Shutterstock.com)

はじめに
みなさんは、普段モノやサービスを購入する際、どのような基準で選んでいますか?もしかしたら、そのモノやサービスが提供する価値に加えて、販売元の企業を調べてから購入する方もいらっしゃるかもしれません。

近年、「エシカル消費」や「フェアトレード」など、「その企業がどれだけ社会貢献意識を有しているか」を購入の指針とする人が増えているそうです。これは消費者の間で「企業の定性的な社会貢献度」が商品=企業を評価する一つの指標になりつつあると言えます。

近年は、投資においても「環境に優しい、ソーシャルグッドな企業活動への投資」が評価されています。それが今回紹介するESG投資です。

 

ESG投資って何?-ESG投資の概要
この章では、「ESG投資」の概要を記します。

まず、「ESG」は、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字です(図表1)。

図表1:ESGに関する要素の例

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出典:GPIFウェブサイト(https://www.gpif.go.jp/investment/esg/#a


企業はこれらの「貨幣的価値への換算は難しいが、着目すべき取り組み」を重視して事業を展開することで「ESGに取り組んでいる」とみなされます。

次に、「ESG投資」において重要なのが「長期的な視点から投資先を決定する機関投資家」です。「機関投資家」は言い換えると「大口の投資家」であり、大量の資金を企業の株式や債券の購入に投入します。

機関投資家はESGの要素に着目し、長期的に投資リスクを下げつつリターンの改善を図ろうとしています。換言すると、機関投資家は潜在的に事業継続が困難になる企業・不祥事を起こす企業への投資を避けることで、長期的なリターンを上げようとしています。

例えば、あからさまに環境を傷つけ、従業員に無理を強いる企業は長期的に見て健全とは言えませんよね。倫理に反する企業は短期的に利益を上げられたとしても、長期的には様々なステークホルダーからの評価を落としていくでしょう。

このような背景や金融緩和というマクロ的トレンドが相まって、世界中の政府系ファンドや年金基金など多くの投資機関が、ESG要素を評価したスコアに基づき投資先企業を選定するようになりました。日本最大の長期資産ファンドであるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)もこの流れに則り、運営会社に対してESG投資に取り組むよう求めています(出典:https://www.gpif.go.jp/investment/esg/)。

 

 

ESG対応に力を入れている企業に認証を
- B Corp Certificationについて

では、こうしたESG対応に力を入れている企業をどうしたら見分けることができるのでしょうか?ESG対応に積極的な企業が任意で取得することができる認証について、運営団体であるB Labの公式ホームページを基に説明します(出典:https://bcorporation.net/about-b-corps)。

有機農法で育った野菜がオーガニック認証を受けられるように、「ESGに力を入れている企業」は「B Corp Certification」という認証を受けることができ、認証を受けた企業は「B Corps」と呼ばれます(「B」はbenefit=利益・利得・恩恵の頭文字)。

この認証を付与している団体が、アメリカに拠点を置く非営利団体「B Lab」です。「B Lab」は「自らの(社会的)ミッションを重んじる企業が、長期的に良い影響を保護し、向上させることを容易とする」ための組織です。

では、どのような企業が「B Corps」の認証を受けられるのでしょうか?
審査が何段階かある中で、今回は特に「ESG:環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)」に関わる部分を紹介します。

まず、認証を得る過程で各企業は「従業員、コミュニティ、顧客、および環境」に関する200以上の設問に答え、各セクションごとで80点以上のスコアを得る必要があります。

加えて、企業は「取締役および役員が意思決定を行う際に、株主だけでなくすべての利害関係者の利益を考慮する」ことを定めた法的要件に従う必要があります。前述したテストがESGのうち「環境(Environment)、社会(Social)」を満たす要件だとしたら、これは「企業統治(Governance)」に関わる要件です。

以上の厳しい要件を満たして初めて企業は「B Corps」として認証されるのです。

 

B Corps認証を受けている企業は?

では、この認証を受けている企業は世界に何社程度あるのでしょうか?2006年にB Labが設立されてから15年ほどの間に、世界74カ国で3,720社がB Corp Certificationを獲得しています(2021年1月12日時点)。有名な企業だとアウトドアメーカーのパタゴニア、アイスクリームを販売するBen&Jelly's(ベン&ジェリーズ)がこの認証を取得しています。

翻って国内に目を向けると、日本では2021年1月現在、エヴィアンを販売する食品会社のダノンをはじめとして6社が認証を取得しています。

とはいえ、世界規模で見るとこれはB Corpsと認定されている企業全体のおよそ0.2%に過ぎません。私の周りでも、この認証を知っている人の数は少ない印象を受けました。日本語版のサイトが用意されていないこともあり、国内においては企業側の認知も、消費者の認知もまだまだ弱いのかもしれません。

 

企業は本気で多様なステークホルダーと向き合う時が来た

ここからは、ESG投資の話を踏まえながら、企業とそれを取り巻くステークホルダーの関係の変遷を振り返ります。

従来から多くの日本企業が「CSR活動(企業の社会的責任)」をコーポレートサイトで公開し、社会貢献活動を内外にアピールしてきました。

しかし、これは本業とは結びつかないため、ブランディング戦略に終止していた側面も否めません。

その要因の一つに、「本気で社会事業に取り組んでいても、それが金銭的に換算されない限り投資家から評価されないから」というものがあったのではないでしょうか。

一方で、ESG投資は「投資家の目線から」事業の社会性を評価するものです。株式を公開している企業は投資家を非常に気にするため、ESGへの取り組みを強める潮流が生まれつつあります。

今までは投資家から評価されないが故に社会貢献活動に対して消極的だった企業も、ESG投資という投資方針ができたことで、本気で「自社がさまざまなステークホルダーにもたらす影響や意義」を見直す局面に差し掛かっているのではないでしょうか。

 

「ESG」は大企業だけのものではない

筆者は、ESGを重視する流れは大企業に留まらないと考えています。具体的に、前章で取り上げた「B Corp Certification」を例にとって考えてみましょう。B labの公式ホームページによると、この認証を取得している企業の80%程度は小規模なビジネスを展開している企業(以下、小規模な企業)とのことです(出典:https://bcorporation.net/about-b-corps)。

株式が公開され、自由に売買される大企業であれば機関投資家からの評価というインセンティブがある一方、株式を公開していない小規模な企業には大企業と比較して明確にESGを意識するインセンティブは比較的薄いかもしれません。

にもかかわらず小規模な企業がESGに関する認証を取得する理由の一つには、小規模な企業の間でも「環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)」への配慮が必要だという意識が醸成されてきたからではないでしょうか。

そして、日本の企業に目を向けると、99.7%が中小企業です(出典:中小企業庁ホームページhttps://www.stat.go.jp/data/e-census/2016/index.html)。現状では、ESGというテーマを大々的に掲げた中小企業の取り組みはまだ活発とは言えません。

しかし、中小企業は地域密着型の経営を行う、大企業には手の回らない規模の社会課題を解決する、など、スモールビジネスならではの方法で社会に貢献しています。言い換えると、日本の中小企業も既にESGの要件を一部満たす形でステークホルダーと関わっている、とも見ることができるのではないでしょうか。この点から、筆者は「ESG」への取り組みは大企業だけではなく中小企業の間でも活発化するポテンシャルを秘めていると考えています。

 

まとめ

ここまで読んでくださった方の中には、「ESG投資は私に関係ないかも...」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。確かに、ESG投資自体は金融業界で起こっている潮流であるため、身近には感じられない人の方が多いかもしれません。

しかし、企業の商品を購入する、サービスを利用することは皆さんしているはずです。われわれ消費者が「商品・サービスの購入」という形で企業を評価するのと同様に、投資家もまた「株や債券の売買」という形で企業を評価するステークホルダーの一片です。

従来の投資家は、「財務状況」という金額に換算できる側面から企業を評価していました。つまり、企業側がいくら環境や社会に配慮した企業活動を行なったからといって、それが投資家に評価されるという可能性は高くなかった、ということになります。

ESG投資も同じく、機関投資家が「地球を消費する、エゴイスティックな企業」から「地球と共存し、多くのステークホルダーを幸せにする企業」を評価する方向にシフトしているとも言えるのではないでしょうか。

そして、それは未来世代に負債を残さないことに繋がります。

昨年話題になったクリストファー・ノーラン監督の『TENET』には、破滅的な環境に陥った地球に絶望する未来人が登場しました。真の意味で、持続可能性がある未来を作るには?人間の活動によって、地球を「消費」しないためには?これからは企業も、投資家も、そしてわれわれ消費者も考えていかねばならないのです。

 

(文:竹内瑞貴、編集:中山明子)

  

<BIGLOBE社員の編集後記>

投資においても「環境に優しい、ソーシャルグッドな企業活動への投資」が評価されているとのこと。竹内さんも述べているように、投資というと身近に感じられない人は多いかもしれませんが、商品を購入する、サービスを利用する際に、企業の社会的貢献という視点に注目されている読者の皆様は多いと思います。
BIGLOBEでは、人と社会と地球の未来づくりに貢献する「SDGs Action by BIGLOBE」を推進しています。ぜひこれからもご期待ください!

 

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