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いま学生が企業に求めるものとは?新しい就活の形「エシカル就活」


「BIGLOBE Style」では、「SDGs」に関する社内外の様々な事例やトピックスもご紹介していきます。今回は、ライターの白鳥菜都さんが、変化する就職活動について執筆しています。

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年明け、社会人の仕事始めとともに多くの学生も本格的な就職活動へと乗り出す。日本経済団体連合会(経団連)の定める就活ルールでは大学3年次の3月が説明会解禁時期、大学4年次の6月が面接解禁時期とされている。しかし、実際には大学3年時の夏にインターンシップ、大学3年時の冬には書類審査を終え徐々に面接へと進む学生も多く存在する。

毎年、テレビやインターネット上を賑わす就活関連のニュースだが、近年は新しい流れが生まれているようだ。

 

変化する「就活の軸」
就職活動を進める上で、よく問われるのが「就活の軸」だ。「就活の軸」とは働く企業選びの指針である。筆者も就職活動をしていた昨年、多くの面接でこの点について問われた。例えば、勤務地、給与、福利厚生など、新卒採用においても中途採用においても、それぞれのこだわりを持って企業選びを進めることだろう。人それぞれのように見える「就活の軸」だが、実はトレンドがある。「働きがい」、「安定」、「ワークライフバランス」などその時々の社会情勢とも連動し、変化が起きている。

特に近年の就職活動の場においてはある特徴的な「軸」の出現が見られる。下のグラフは、BIGLOBEが2020年9月に20代の学生300人、20~30代の社会人600人に対して実施した調査の結果の一部だ。「これから就職・転職を考える際、会社選びの条件としてSDGsへの取り組みは重要だと思うか」という質問に対し、約60%が「重要」あるいは「やや重要」と考えていることがわかる。

 

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出典:BIGLOBE「ニューノーマルの働き方に関する調査」https://www.biglobe.co.jp/pressroom/info/2020/10/201022-1

 

上の調査が示すように、就職活動において重視される項目としてSDGsへの取り組みが重要視されるようになったのである。また、日本総研が2020年に発表した調査(※)においても10代から20代前半の学生のうち約47%が環境問題や社会課題に取り組んでいる企業で働きたいと回答している。

※出典:日本総研「若者の意識調査(報告)ーESG および SDGs、キャリア等に対する意識 ―」p.46(https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/detail/200813report2_kojima.pdf

若者のあいだで、普段の生活の中ではもちろん、就職活動の場においてもSDGsをはじめとする環境や社会への影響が意識され始めているようだ。

昨年、この流れをくんだ新しい就職活動の形、「エシカル就活」と名付けたイベントを運営するAllesgood(アレスグッド)が立ち上がった。「エシカル」とは直訳すると「道徳的」や「倫理的」と訳され、就職する企業探しにおいても若者の指標の一つになりつつあるのが「エシカルさ」だと言えるだろう。今回、Allesgoodの代表、勝見さんに近年の学生の就活事情を伺った。

 

「エシカルさ」で企業探しをする若者たち

Allesgoodはドイツへの留学や、途上国での事業の立ち上げを経験した勝見さんが日本に帰国後、就職活動を行う中で感じた難しさをきっかけに立ち上がった。SDGsに関わるトピックをはじめとし、社会課題解決に関心を持つ学生と企業を結びつける就活イベント「エシカル就活」やSDGsを軸とした就活を行うための新たな求人サイトの開発を行っている。

 

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画像:Allesgood主催イベント「エシカル就活」第一弾

 

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画像:Allesgood主催イベント「エシカル就活」第二弾

 

「もともと僕自身が大学で経営学を学んでいく中で、企業活動というものが地球環境の破壊や、社会格差を生んでしまうという問題に関心を持ちました。それらの問題を乗り越える「持続可能なビジネス」を学び、実践するために海外への留学や新規事業の立ち上げに取り組んでいたのですが、コロナの影響もあり、帰国して日本での就職活動を経験することになりました。自分の中で社会課題解決を就活の軸にしていたのですが、既存のサイトや就職活動の中ではなかなかそのような企業を見つけるのは困難でした。」

これをきっかけに、周りの学生へのヒアリングを重ねると、同じように社会課題の解決を就職活動の軸として持つ学生が多くいることがわかったという。さらに勝見さんは、それらの学生の特徴も教えてくれた。

「160人くらいの学生にヒアリングして、5人に1人くらいの割合で社会課題解決を就活の軸にしている学生がいることがわかりました。他にも、Allesgoodの活動で関わっているある大手企業でも、2021年度の内定者のうち約半分くらいが社会課題解決に関わりたいという人たち。これまでにAllesgoodでやったイベントには全国から約300人ほどの学生が参加してくれています。それらの学生の特徴としては、海外留学の経験や学生団体の立ち上げ経験があるなどバイタリティがあってグローバルな視点を持った人たちが多い印象です。」

このような学生たちも存在するが、既存の就職活動の枠組みにおいては、これらの関心軸を生かすことが困難であるという。

「就職活動を始めると「どんな職種・業界に就きたいの?」という質問が飛んできます。就活サイトなどでも、例えばコンサルや商社というような括りで企業探しをする設計になっていて、フックが「解決したい社会課題」であることは少ないと思います。職種・業界で仕事を選ぼうとすると、これまで熱量を持って取り組んできた活動にブレーキがかかってしまいます。そこで学生自身の課題意識と企業に求められることにギャップが生じてしまい、モチベーションが下がってしまっていると思います。」

 

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画像:イベントにてお話しされる勝見さん

その一方で、SDGsや社会課題解決をマーケティングのためだけに使用する企業の存在も問題とされている。学生は、就職と社会課題解決の双方を目指すにあたり、企業にどのようなものを求めているのだろうか。

「それぞれの学生で、重視している課題が異なるため一概には言えませんが、共通することとして「透明性」や「具体的なビジョン」を求めていると思います。SDGsウォッシングという形で、企業が見せかけ、口だけの取り組みをしてSDGsを免罪符にするような流れがあります。リップサービスではなくて、例えば2030年までにこの課題を何%クリアします、というような情報の開示と具体的なビジョンを担保できるような企業を理想としていると思います。」

このような流れを受けて、勝見さんは今後、企業側にもよりSDGsを意識した動きが見られるだろうと述べる。

「Allesgoodのイベントなどを通じて企業さんとお話しする中でも、学生の意識変化を受けてビジョンの見直しや具体的な数値の設定を行ったという話を聞きます。優秀な学生を集めるためにも、企業側の意識改革が求められています。IT×社会課題、小売×社会課題などどんな業界においても、「社会課題」の部分を口先だけではなく取り組む企業が「エシカル」であると捉えられます。本来、SDGsは全ての企業が取り組まなければならないものなので、この流れが加速することが理想だと思います。」

5人に1人、既に約20%もの学生が「エシカルさ」を就活の軸にし始めている。グローバル化やキャリアの多様化が進む中で、このような意識を強く持って就活をする学生はこれからも増えていくのではないだろうか。

 


変わる学生の価値観に企業はどう対応する?

SDGsへの取り組みの推進が盛んに叫ばれる中で、企業よりも先んじて学生の側から「働くこと」と「エシカルさ」を結びつけようとする動きが見られ始めた。学生たちは、表面的な取り組みだけではなく、具体的なアクションを企業に求めているようである。

人生の多くの時間を占めることになる仕事の場において、「エシカルさ」に欠ける業務を行うことは近年の学生にとっては苦痛を伴うものになるだろう。自身や所属する企業だけではなく、地域や社会、世界といった広い視点を元にした課題意識から、どんな社会課題を解決するのかが新たな「就活の軸」として定着していきそうだ。勝見さんが述べるように、全ての企業がSDGsに取り組んでいると言える状況に到達するためには、学生側だけではなく企業側の内部からの意識改革が必要であろう。

 

(文:白鳥菜都、編集:中山明子)

 

 

<BIGLOBE社員の編集後記>

最近、私の周りでもエシカル消費に関して、話題になることがあります。身近なところでは、コンビニエンスストアでの食品ロスを削減する「エシカルプロジェクト」を店頭で目にし、エシカルというワードに触れた方も多いのではないでしょうか。
就職に関しても「エシカルさ」という「軸」が出現しているとのこと。意識調査のグラフにも示されているように、若い世代のSDGsへの関心の高さがうかがえます。選ばれる企業であるために、様々な取り組み、そして発信力の強化が求められます。

 

 

BIGLOBEでもSDGsにつながる様々な取り組みを行っており、総務部の活動を以下に紹介しています。

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