こんにちは、ビッグローブ株式会社 基盤本部 基盤統括部にて、新サービス創出活動推進を担当している吉川です。
「技術を通して、もう1つの通信を考える」をテーマに、多摩美術大学 情報デザイン学科の永原教授、清水講師、学生の皆さんとの産学共同研究プロジェクトを2021年4月から実施しています。
今回は、ビッグローブ株式会社 取締役執行役員常務であり、開発部門(基盤本部)の責任者でもある鴨川 比呂志に、この産学共同研究プロジェクトになぜBIGLOBEが取り組んでいるのか、基盤本部をどのような組織にしていきたいか、またエンジニアにとってどんな働く場所でありたいかについて熱く語ってもらいました。
尚、取材は合同会社スゴモン代表でインタビューライターの松田然さんにお願いしています。
- 開発部門(基盤本部)内に新サービス創出活動推進等をミッションとした組織を作った狙い
- 産学共同研究プロジェクトを起案されたときのファーストインプレッション
- 「多摩美術大学 × BIGLOBE」産学共同研究プロジェクトに抱く、今後の期待
多摩美術大学 × BIGLOBE 産学共同研究プロジェクトとは
インプットの講義や学生のアイデア発表を含めた創作活動の過程をBIGLOBE社員がオンラインでリアルタイムに参加及び録画視聴できる環境を作っています。
学生の作品制作のプロセスへの参加を通じて、Z世代が通信というものをどのように考え、認識しているのかといったことへの気づきや、学生のアイデアからインスパイアを受けることで、BIGLOBE社員が将来の新サービス検討などの新しい取り組みにつなげていくことを目的に取り組んでいます。
開発部門(基盤本部)内に新サービス創出活動推進等をミッションとした組織を作った狙い
ーー2018年の就任時に、基盤本部に対して課題を感じられたとお伺いしました。
私が本部長として基盤本部へ来たとき、「エンジニアが手を動かしてモノをつくることが少なくなっている」と感じました。本来はモノづくりを担うはずのエンジニアですが、大きな会社になればなるほど、予算管理や人集めが業務の中心になり、開発は外注し「現場監督」のような存在になるのはよくある話。BIGLOBEもこうした状況に陥っていたのです。
もちろん、業務の外注も適切にできる人材が会社には必要です。しかし、ほとんどのエンジニアがこうした人材では、業務が「外注頼み」になってしまいます。外に頼りきりになると、自分たちで成果物を直したり、改善したりができなくなり品質に対する責任の所在も曖昧になりますし、コストも自分達でコントロールできなくなります。そして何より、最新技術を活かして成長していくのは外注先になり、社内のエンジニアが成長できません。外注先であるパートナーの皆さんと社内のエンジニアが一緒に成長できるような環境が作れれば最高だと思います。
もともとBIGLOBEはモノをつくって、トライ&エラーを繰り返してインターネット接続事業という新たな業界を切り開いた会社だったはずです。そうしたDNAが薄れていくことに、当時は強い危機感を覚えていました。
ーーそこで新しく基盤統括部を立ち上げられたんですね。その役割についてお聞かせください。
基盤本部内の「ヒト・モノ・カネ・情報」を統括してエンジニアの皆さんが働きやすい環境をつくる「司令塔」のような役割を担っています。
具体的には、BIGLOBE StyleのTechBlogの作成・運営、産学共同研究プロジェクトなどの開催等を通じた社内人材育成や社外人材の採用促進、新サービス創出活動の推進、本部内の適切な予算執行を目指した活動、品質管理活動など多岐にわたります。
また、エンジニアの皆さんに外部の知識を手に入れて技術をアップデートしてもらうキッカケづくりや、外部人材に対して「BIGLOBEは面白い取り組みをしているし、成長できそうな会社だ」と感じてもらえるような仕掛け、入社後のギャップをなくすための取り組みも重要なミッションとして考えています。
1987年 国際電信電話株式会社(KDD)入社
2006年 同 IPソリューション商品企画部長
2007年 株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ代表取締役副社長
2009年 KDDI株式会社アプリケーション推進部長
2015年 同 グローバルコンシューマビジネス本部長
2017年 ビッグローブ株式会社執行役員常務
2018年 同 取締役執行役員 基盤ライン長
2019年 同 基盤本部長
ーー実際に基盤統括部を立ち上げて、どんな手ごたえを感じましたか?
まず、社員の考え方が変わってきたのを感じています。例えば、エンジニアのアイデアをキッカケに、世界で初めて固定回線で「NAT64/DNS64」と呼ばれる技術を商用化した事例があります。こうしたチャレンジングな取り組みは、ここ数年のBIGLOBEにはなかったものです。
また、社員としてBIGLOBEに入ってきてくれる人数が増えてきました。BIGLOBEの強みは「通信技術習得もソフトウェア開発もできること」。どちらの領域もカバーする超大手企業はありますが、そこでは業務が細分化していることも多く、自分の担当領域は狭くなりやすいんです。さらにBIGLOBEではAmazon Web Services(AWS)などのクラウド関連の取り組みにも積極的なので、「通信、インターネットの構造に関する技術取得・クラウドでの開発・ベーシックなソフトウェア開発」をすべて経験し、フルスタックエンジニアを目指せる環境が揃っています。
上記を採用時に言語化することで、入社後のミスマッチを防ぎつつ「BIGLOBEの進むべき道に共感してくれる人」に入社してもらえるよう心がけています。
産学共同研究プロジェクトを起案されたときのファーストインプレッション
ーーそもそも、最初に社内で「産学連携」の活動が生まれてきたことをどう感じていましたか?
正直、最初はみんな恐る恐るで捉えていると感じていました。「自分の貴重な時間を割くのはどうなんだろう……」と。しかし、いきなり全員が飛びつくのもおかしな話だと思うので、取り組みに納得して少しずつ参加者が増えてくれればいいと思います。
ーー今回の「産学共同研究プロジェクト」では多摩美術大学さんと連携されています。情報・工業系大学ではなく美術大学がパートナーということに驚きました。
このプロジェクトを基盤統括部のメンバーから提案されたときですが、学校名を聞いた瞬間に「ドンピシャだ」と思いました。なぜなら、今後ITの世界で大切になってくるのは「デザイン」だと感じているからです。
従来は、「回線速度が速い」「どこでもつながる」など、優れた機能を持つサービスが勝者になりました。しかし、昨今は機能面で各社に大きな差はなくなりつつあり、サービスの使い勝手やアプリやWebなどの目に見えるデザインの良し悪しが勝敗を分けるポイントになってきています。例えば、本年7月にお支払い頂く通信料金の一部が社会貢献事業に寄付される「donedone(ドネドネ)」というモバイルの新ブランドをリリースしたのですが、実はアプリの使い勝手やデザインをめぐって社内で相当議論になりました(笑)。アプリの完成度がサービスの成否に大きくかかわることをみんなが認識しているからこそです。
こうした背景もあり、デザインやアーティスティックな感性を持つ学生さんの意見を聞ける機会は本当に貴重になっているので、多摩美術大学さんとの連携は私だけでなく社長もかなり乗り気のプロジェクトでした。
ーー昨今は、社会貢献への姿勢を積極的に発信する企業が注目を集めています。そうした風潮の中で、BIGLOBEも変わってきているのですね。
はい。最近、知り合いのキャリアカウンセラーから、会社選択の際に事業規模や労働条件よりも、社会貢献への取り組み方やリモートワークなどの働き方の柔軟性を重視している学生さんが増えてきたと聞きました。働くことに対する感覚が変わりつつあるのを感じます。
その点、弊社は1つの軸として「三方よし」を目指していきたいと思っています。あくまで企業として利益を上げていくことは考えながら、それだけではない形で社会に貢献していきたい。困っている方への支援やSDGsの活動を通じていろいろな人とのつながりを築くことが大事になります。例えば、温泉地でテレワークすることで働きながら健康になることを目指す「ONSEN WORK」というサービスでは、お客様はもちろん地域貢献もできる取り組みとして企画が生まれています。
「多摩美術大学 × BIGLOBE」産学共同研究プロジェクトに抱く、今後の期待
ーー産学共同研究プロジェクトの活動に、どのような効果を期待しますか?
多摩美術大学さんの知見も借りて、「BIGLOBEらしさ」を出せる新たなサービスや事業を生み出したいですね。ただし、この取り組み単体で「成功」「失敗」と評価するつもりはなく、こうした活動をやり続けていくことが重要だと考えています。1、2年後に、潜在的にこうした活動へ関わりたいと思っていた社員が、自分の殻を破ってくれればいいんです。
社員を巻き込んで考え方を変えられた例に、毎年AWSが世界中のエンジニアを集めてラスベガスで開催しているイベント「AWS re:Invent」への参加があります。2018年時点でも、社員はみんなここに参加すれば最先端技術に触れ, 学習できると解っていたのですが、実際に行く踏ん切りがついていませんでした。
そこで、私が毎年イベントに参加することで「俺も行くからお前も来い」と言える体制をつくりました。毎年若い社員を何名か連れて行った結果、外国との関わりが薄かった社員が、帰国すると意識をガラッと変えたのです。彼は、いまや社内きってのAWS通になっています。こういう人材を一人でも増やしていきたいですね。
ーーでは、最後に今後の基盤本部が目指す姿を教えてください。
あえて言えば「XX本部という仕切りが無くなるくらいがいい」と思っています。現状の社内では、まだ「売る人・つくる人」といった役割分担が残っていますが、それでは革新的なサービスを生み出すことはできません。
だからこそ、全員が同じような知識を持ち、エンジニアが営業やマネタイズもできるような体制を構築できたら最高です。幸い、最近ではクラウドを活用すれば最小限のリスクでチャレンジができるようになってきています。社員には積極的にトライ&エラーを繰り返してもらい、新しいサービスを多く創出してもらいたいですね。
いかがでしたか?今回は、鴨川 基盤本部長のインタビューをレポートさせていただきました。
多摩美術大学とBIGLOBEの産学共同研究取り組みは、7月下旬の作品展示、発表に向けて、現在も進行中です。 このBIGLOBE Styleでは、次回は研究発表の内容をレポートする予定です。ぜひ、楽しみにしていてください。
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