BIGLOBEの「はたらく人」と「トガッた技術」

ネット黎明期を切り拓いたインフラエンジニア。AI時代の今もユーザーニーズへの挑戦は続く

遠藤 由妃夫

こんにちは。BIGLOBE Style編集部です。
今回登場するのは、1986年にNECへ新卒入社して以来ネットワークインフラに携わってきた遠藤由妃夫。パソコン通信の時代からインフラ技術に取り組み、BIGLOBEを創ってきたインフラエンジニア界のレジェンドです。インフラ技術が様変わりした現在もなお、クラウドやAIなどの先端技術を積極的にキャッチアップしつつ、社内インフラの改革に挑戦中。40年近くにわたり第一線で活躍し続けるモチベーションの源泉とは。そして未来のBIGLOBEを支える次世代のエンジニアたちに伝えたいメッセージとは、いったいどのようなものでしょうか。

遠藤 由妃夫(えんどう ゆきお)
事業プラットフォーム部門 DX推進部 IT戦略グループ
エグゼクティブエキスパート

1986年NECへ新卒入社。
入社時からISPのネットワークに携わり、BIGLOBEを創ってきたベテランエンジニア。現在は、AVD(クラウドを用いた仮想デスクトップ環境)展開の対応をはじめ、最新のテクノロジーを駆使したワークスタイルの移行に携わる。

※撮影時のみマスクを外しています。

インターネットの黎明期からインフラエンジニアとして活躍

遠藤 由妃夫

――まずは改めて、遠藤さんのご経歴についてお話しいただけますか。

 

私がNECに入社したのは1986年のことです。ちょうどその年に日本で通信の自由化がスタートし、NECでは「PC-VAN」というパソコン通信サービスを開始しました。私はこのPC-VANのインフラ開発にエンジニアとして参加したのを皮切りに、NEC/BIGLOBEの通信インフラサービスの構築・運用に携わりました。NECから分社した2013年にネットワークサービス本部長に就任、格安スマホ事業を立ち上げました。その後役職定年を迎え、2018年からは社内インフラの構築・運用に携わるようになり、現在に至ります。

 

――パソコン通信サービスが生まれた1986年は、日本インターネット史のプロローグともいえるタイミングです。入社当初から通信技術に関心があったのですか?

 

いえいえ。私は大学時代に半導体に関する勉強をしていたので、当時半導体で世界トップシェアだったNECに入ろうと思ったのです。当然半導体の仕事を任されると思っていたら、配属先はなんとVAN(パソコン通信で使うネットワーク技術)の技術部隊。VANなんて言葉を聞いたこともなかったので、あわてて本屋に行って調べたのを覚えています。当時はGoogle検索もありませんでしたからね(笑)。

 

――それは大変でしたね。当時、コンピューターに関する知識はどの程度お持ちだったのですか?

 

大学時代に少し学んでいたのは幸いでしたが、実務レベルの知識ではありません。そこで、NECが当時手がけていたメインフレーム(大型汎用コンピューター)のOS開発の現場で一年ほど経験を積んで、それから本格的にVANの開発に従事しました。その後、日本でも商用インターネット事業が開始され、1994年にNECでもISPサービスを始めることになりました。当時は部内にUNIXを扱える人材が少なかったため、私がリーダーとなって立ち上げたのがNECで初のインターネットサービスです。以来、30年近くインターネットサービスのインフラ開発を続けることになりました。

 

――BIGLOBEの、というより日本のインターネットサービスの礎を築いたエンジニアの一人としてご活躍されたわけですね。

 

クラウドを駆使したテレワーク環境を実現

遠藤 由妃夫

――遠藤さんが長年にわたってインターネットサービスのインフラを開発し続けてきた中で、エンジニアとして特に大切にしていたテーマはどのようなことだったのでしょうか。

 

一言でいえば、「ITとユーザーニーズのギャップを埋めること」です。わかりやすい例でいうと、インターネット回線やWebサービスの応答速度が遅かったり、止まってしまったりすると、ユーザーはクレームを挙げますよね。しかし、そもそも世の中で提供されている既存のハード・ソフトが、そうした運用面の課題に十分応え切れていない場合もある。ここに「ギャップ」が生まれます。そこで我々エンジニアが、技術の組み合わせや設定を工夫し、ユーザーのニーズに応えていくわけです。インフラエンジニアとして働いていた間、私が最も苦心したのは「とにかく通信を止めないこと」でした。中でも苦労したのはWebサービスの可用性確保ですね。サーバーが1000台を超える規模になった頃、Web応答速度を維持するのに大変苦労する中で、標準化や仮想化、自動化といったアイデアがどんどん生まれ実装していきました

 

――サーバーの仮想化というのは、現在のクラウド技術にも通じるものがありますね。

 

その通りです。我々がインフラ開発を通じて手がけてきた技術の中には、現在のインフラのベースとなって息づいているものがたくさんあります。

 

――現在はクラウドやAIといった先端技術も登場し、パソコン通信の時代と比べるとはるかにITが進歩しています。ITとニーズのギャップはかなり解消されたのではないでしょうか?

 

いえ、まだまだギャップはありますよ。国や地域によってもユーザーのニーズは違いますし、そのすべてに応えるには技術が足りない。たとえば日本人は「サービスを受けるとき、人として大切に接してもらうこと」について評価が厳しく、その点でクレームが出やすい。高精度なAIチャットボットを取り入れた弊社のカスタマーサポートなどは、それに応える技術の一つといえるかもしれません。

 

――インフラエンジニアとして大切にされてきたことが、よくわかりました。続いて現在取り組まれている仕事についても詳しく教えていただきたいのですが。

 

今は社内のOA環境をテレワークに対応できるよう、改善を進めているところです。テレワークでは自宅から会社のサーバーにアクセスする必要がありますが、従来使われていた「VPNにつなげて社内ネットワークに入る」という方法では、トラフィックがVPNでボトルネックになってしまう。そこで私が注目したのは、場所によらずIDに加えデバイスとその状態も判断して認証を行うことで、どこからでも接続できるゼロトラストネットワークです。

私は2016年頃、会社のPCを自宅に持ち帰らなくてもリモートワークできるUSB起動型シンクライアントシステムを導入しました。しかしコロナ禍においてテレワークを加速するためには、VPNサーバーに負荷のかかるUSBシンクラよりも、セキュアなPCをゼロトラスト方式で認証し、社内OA業務が可能なクラウド上の仮想デスクトップを利用する「仮想OAPC」の構想が優れています。そこで私は仮想OAPC構想を実現すべく、セキュアなPCにはGoogleのChromebookを、仮想デスクトップにはマイクロソフト社のクラウドサービスAVDを導入。しかしAVDではChromebookをゼロトラスト認証する技術がデフォルトで搭載されておらず、複数の認証技術を組み合わせてなんとか実現させましたが、これは大変苦戦しました。トライ&エラーを繰り返した結果、ようやく成功させることができたのです。

 

――今ではBIGLOBE社内の誰もが、当たり前のようにクラウド仮想OAPCによるテレワークを利用していますね。社内インフラの構築にあたっては、どのようなことを大切にしているのでしょうか?

 

お客さま向けのインフラを手がけていたときと同じで、「サービスを止めない」ことですね。たとえばパソコンを使っていると、OSのアップデートのために10分ぐらい止まってしまうことがあるでしょう。私はあれが嫌なんです。人間のためにコンピューターがあるはずなのに、コンピューターのために人間が時間を使うのはおかしい。ユーザーにコンピューターの世話をさせてはいけない。コンピューターの世話をするのは我々インフラエンジニアだけでいいのです。事実、クラウド仮想OAPCでは、OSやアプリケーションの大量更新でも、ユーザーは利用が妨げられるようなことが全く無い仕組みになっています。

 

――つまり、ユーザーにとってコンピューターが使えることが「当たり前」の状態にする、と。

 

そう、まさにそれがインフラエンジニアの役割だと思っています。空気というのは吸えて当たり前のもので、誰もそのことに感謝したりはしません。嫌な臭いがしたときにだけ苦情を言う。ITインフラもそれと同じで、匂いのない空気のような存在が理想なのです。もちろん「ITとユーザーニーズのギャップを埋める」という私の目標は今も変わっていません。一つのプロジェクトが完了したからといって手放しで喜ぶことはなく、ユーザーの満足を追求し続けていく。「まだまだ、序の口だよね」というのが、私の口癖なんです(笑)。

 

「ITとユーザーニーズのギャップを埋めるエンジニア」として成長してほしい

遠藤 由妃夫

――遠藤さんが入社してから30年以上が経ち、ITインフラを取り巻く環境も、BIGLOBEも大きく変化しました。これからBIGLOBEに入社する若いエンジニアにとっては、どのようなやりがいがある環境だと思われますか?

 

繰り返しになりますが、ITとユーザーニーズとのギャップが消えない限り、エンジニアがやるべきことはいくらでもあります。そのギャップを技術で埋めていくことは、エンジニアにとってかけがえのない喜びだと思います。いくらAIが発達してきたといっても、まだまだ人間にしかできない仕事は多い。2045年にはAIが人間の知能を超えるシンギュラリティが起こるとも言われていますが、それまでまだ23年もありますからね。

 

――遠藤さんご自身は今、どのような技術に注目していますか?

 

一つはやはりAIですね。最近は契約書の内容をチェックするAIなどもありますが、インフラ分野でもAIは役立つと思います。たとえばユーザーが安定的にモバイル通信を利用できる環境を保つには帯域制御が欠かせませんが、手動では限界があります。どの回線の通信量をどの程度制限するかという判断をAIが判断してくれれば、非常に効果的です。あとは、先ほどお話ししたゼロトラストのモバイル認証は、より完全なかたちで実現できれば画期的な技術となるでしょう。

 

――インフラエンジニアにとっては、まだまだ学ぶべき技術がたくさんあるわけですね。ところで30年以上当社を見てきた中で、BIGLOBEの社風はどのように変化したと思われますか?

 

私が入社した頃は、時代からしてもThe昭和の企業という感じでしたが(笑)、今は年齢問わず皆さん自由に働けるようになって、うらやましいです。とはいえ、私の場合は入社早々、VANという社内でも前例のない技術に取り組むことになったため、技術面ではかなり自由にさせてもらえました。技術者が新しいことに挑戦できる風土というのは、昔から変わらずあったのかもしれません。「ビッグローブマインド」は最近できたものですが、私が見ても違和感はないですね。

 

――これから入社するエンジニアや、今働いている若手のエンジニアに向けて、どのような姿勢で仕事に取り組めば良いか、アドバイスをいただけますか?

 

視点は高く、視野は広く持つことでしょうか。目の前の仕事だけ見るのではなくて、もっと先の未来を見据えて新しい技術に取り組んでいくと、インフラ構築の仕事はとても面白くなります。誰も試したことがない技術の組み合わせでソリューションを見つけたときの感覚は、本当に楽しいものです。最近はコロナ禍のため行けていませんが、以前は国内はもちろん、アメリカの展示会にも足を運んで最先端の技術や製品をチェックし、良いものはすぐ業務に取り入れるようにしていました。そういう、技術の習得を楽しむ気持ちや、ユーザーのニーズに応える目的意識が、エンジニアとして成長するためには大切だと思います。

 

――そのように意欲的な若手エンジニアにとって、BIGLOBEは成長できる環境だと思われますか?

 

もちろんです。BIGLOBEはNECからスタートした純日本企業でありながら、グローバルレベルの先進的な価値観を作り上げてきた会社。なかなかここまでオープンで、若手の活躍しやすいIT企業はないのではないでしょうか。それに加えて、AIをはじめとした新技術が登場している今、ITという分野自体の変化も速い。まだまだ面白いことがたくさん起こると思いますし、若いエンジニアにとって未来は明るいと思いますよ。新しい技術をキャッチアップし続けながら、ITとユーザーニーズのギャップを埋める仕事を楽しんでほしいな、と思います。

 

――本日はありがとうございました!

 

当社では一緒に働く仲間を募集しています。ご興味のある方はこちらの採用情報をご覧ください。

www.biglobe.co.jp

※ Googleは、Google LLCの商標です。
※ 記載している団体、製品名、サービス名称は各社の商標または登録商標です。