BIGLOBEの「はたらく人」と「トガッた技術」

男女別学は「コミュ障」?育ちの環境を考える


「BIGLOBE Style」では、「SDGs」に関する社内外の様々な事例やトピックスもご紹介していきます。今回は、ライターの森ゆりさんが、「男女別学」について執筆しています。

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皆さんは、中学・高校の思い出といえば、なにを思い浮かべますか?
私は6年間通った中高一貫の女子校で行われていた、運動会の「ムカデリレー」が一番にあがります。
5人一組で縦に並び、ストッキングで編んだ自前の足かせをつけて、息を合わせながら前進するリレー形式の競技です。転んで泥だらけになっても脇目もふらずに、大声を出しながらゴールを目指す。まさに青春ですよね?

私は中高一貫の女子校に通っていました。第一志望の学校での6年間は、文字通り本当にのびのびと、楽しく過ごす毎日でした。

一方で、そんな自由な空間から解き放たれ、男女共学の大学に入学したときの違和感たるや。
女子も男子も、誰もが異性を意識し、よりかわいく、よりかっこよく、よりそつなく見える行動をとる生活……男子のいる中で生活するということはこういうことなんだと、あぜんとしました。

今回は「男女別学」で育った私が、男女が半々ずついる社会で過ごす中で感じた人との関わり方についてのお話を書いていこうと思います。

 

普通だと思っていた私は、「マイノリティー」でした

そもそも、私がこれまで当たり前に過ごしてきた環境は圧倒的な「少数派」です。文科省の学校基本調査(2019)によると、高等学校4887校のなかで、女子校は290校、男子校は107校と、いわゆる「男女別学」にあたる学校はわずか8.1%です。

 

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  「学校基本調査」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
をもとに作成

 

グラフにすると歴然ですよね。
女子のみのクラスで育った人々がいかに少数派であったかということは、中にいる人間には到底想像がつきませんでした。
異性の目を気にする必要がなく、世間の「男性がリードし、女性は支える」という従来型の概念を受け取る機会が少ないため、自分のことは自分でなんでもやる子が多かったように思います。

思春期を女性に囲まれて過ごした私は、社会に出てみて初めて「男性がいる場での自分」に遭遇しました。
異性を意識し合う空間で生活していくうちに「自分は人との距離感をうまく取れていないのでは?」「自分が話したいことをそのまま話してしまうと、場が凍ってしまうのではないか?」と感じるようにもなりました。

 

 

もしかして、私はコミュニケーション障害?

女子校で育ち社会に出た私は、他人が普通にやっている(ように見える)会話をあまりにもできていませんでした。「自分は対人コミュニケーションにおいて何らかの障害を抱えているのでは?」「人間として欠陥品なのでは?」と思うこともしばしば。しかし、男子校で中高の6年間を過ごした先輩に話を聞いて、その謎はとけました。

 「そりゃあうまくコミュニケーションを取れなくても仕方ないよね。自然の摂理として、男女半々ずついる社会が一般的なのに、作為的にそのバランスを変えられたところで育ったんだから」

そうか、私のせいだけではなかったのだ。
すっと肩の荷が下りる思いでした。

 自分の弱さで他人とうまく話せないのだと思っていたけれど、原因は育った環境にもあり、責められるようなことでもなければ恥じることでもないのだ、と気づいたのです。

 

男子校の先輩も悩んでいた、異性とのコミュニケーション

男女別学のこの問題は、育児・教育ジャーナリストのおおたとしまささんも触れています。

男子校・女子校の出身者の多くは「異性との適度な距離感が身につかなかった」と言います。少なくとも、恋愛や結婚で別学が大きく不利になることはないでしょう。ただ、異性とのコミュニケーションの機会はそれだけではありません。職場の同僚などと、人間同士のリスペクトと同時に異性間のデリカシーをもってコミュニケーションを取る方が圧倒的に難しい。その力を身につけるためには、別学であっても異性との交流の機会を意識的に持つことが大切です。
(2020年10月5日朝日新聞EduA https://www.asahi.com/edua/article/13778256 より)

 

 

私の先輩も、6年間男子校でのびのび育ってから女性のいる社会で生活をするようになったときに、今までとの違いに苦労したといいます。
女性との距離感がよくわからないから、どこまでが言ってはいけない範囲なのかがわからず黙ってしまって自分の意見が言えなかったり、逆に余計なことを言ってしまい空気を凍らせてしまったり。
「女子と話せない」引け目がありすぎて、コミュニティ内で常に道化を演じ、いじられることでなんとか自分の立ち位置を確保しようとしたこともあるとのこと。

他にも、「男子校だから」といって性犯罪やセクハラについての防犯教育を十分に実施されなかったり、性差別や女性蔑視に対して疑問を持つ機会が少なかったり、卒業して社会に出たときに他者を傷つけかねない環境にあるという指摘もあります。男女別学で育った人にとって異性とのコミュニケーションが、いかに難しいかが浮き彫りになるかと思います。

しかし、男女別学に救われることも何度もありました。例えば「男性は理系に、女性は文系に強い」という通説がありますが、男女別学というジェンダーバイアスのかからない状況に身を置くことによって、のびのびと学習に取り組めます。
また、アイドルにしろ、2次元にしろ、数学にしろ、美術にしろ、何かを好きと感じ追及することに対して、「男女別学」は大変寛容な環境だったように感じています。私自身、勉強も運動も、わき目もふらず臨めたのは、別学だったからだと思っています。男子の目を気にせず全力で取り組んだ運動会は、まさに汗と涙の結晶、青春の思い出です。

 

あなたの過ごした環境は大丈夫? 自分自身の価値観と向き合おう

今回は「男女別学」という環境に着目しました。自分がうまくコミュニケーションを取れないことに悩んでいる人は、同じ境遇の人の話を聞くことで安心できるのではないかと思います。私は自分の生きづらさの原因を知ることができたこと、また他の人と共有できることに安心しました。よくよく考えてみたら、大学で仲良くなった友人には別学出身の多いこと。異性がいる環境下に適応しきれなかった人同士で集まってしまうのは、自然なことだったのかもしれません。

別学・共学に限らず、部活や会社、家庭まで、ある一つの価値観に支配される環境下で長く過ごす経験は、多くの人にあるものではないでしょうか?
そしてそれが世間でいう「一般的」とかけ離れていることも、ざらにあると思います。

「男子校出身だから」「女子校で育ったから」
そんなくくりで縛って人を見ずに、今一度自分の振る舞いや価値観に、疑問を呈してみるのはいかがですか?

きっと少しだけ他人に寛容になれると思いますよ。


(文:森ゆり、編集:中山明子)

 

 

<BIGLOBE社員の編集後記>

のびのびと楽しい学校生活を過ごした後、社会に出て悩みをかかえる人は多いのかもしれない。これまでの環境とは異なる男女比、幅広い年代、異なる価値観の中で育ってきた同僚・・・。当社でも毎年、4月には新入社員が入社します。森ゆりさんは「他の人と共有できることに安心しました。」と言っていました。テレワークによるコミュニケーション課題も言われていますが、しっかりと乗り越えて、思いを共有できればと思います。
男女別学のメリット・デメリットはもちろんあります。つい最近も、「女性は・・・」という発言が大きな社会問題となりました。個人の良い点をどんどん伸ばし、男女問わず、誰もが自分の能力を発揮でき、活き活きと働ける社会・会社をつくっていくために、今一度、自分自身を振り返り行動していきたい。

 

 

 BIGLOBEでは入社してくださる皆さんの力をより発揮できるように、今BIGLOBEで働いている社員が継続して力を発揮しやすい環境を作るように様々な取り組みをおこなっています。BIGLOBE Styleではその一例も紹介しています。

 

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