CX(Customer eXperience:カスタマー・エクスペリエンス)という言葉をご存知でしょうか。日本語では「顧客体験」を意味し、商品やサービスの購入から利用までのさまざまな体験が積み重なったもの、と言われています。これまでもCX向上は企業が取り組むべき重要な課題とされてきましたが、昨今のインターネットの普及などによって顧客接点が多様化して、考慮すべきCXの質・量も複雑化し、その対応の重要性は格段に増しています。
今回は、BIGLOBEが注力する光回線の領域で、全社横断でCX向上に取り組んでいるプロジェクトの奮闘について、その中心メンバーの方々にお話を伺います。
(左から)
内藤 二郎 (ないとう じろう)
営業統括本部 リテンション推進部 部長
カスタマージャーニー・調査分析 WG 兼 プロビジョニング WG 担当
土生 香奈子 (はぶ かなこ)
営業統括本部 エグゼクティブ プロフェッショナル CX
プロジェクトオーナー 兼 お客さま対応 WG 担当
三浦 淳子 (みうら じゅんこ)
営業統括本部 リテンション推進部 リテンション推進2グループ グループリーダー
PJ事務局 担当
長田 成人 (ながた なるひと)
プロダクト技術本部 サービス運用部 部長
サービス品質 WG 担当
- CXの外部調査が予想外に低迷。問題点はどこに?解決のために発足したプロジェクト
- 浮き彫りになった「事業者目線」。求められる横断の最適化と「お客さま目線」の追求
- 予想以上の回線速度への不満。対策は「伝える努力」と「お客さまとのコミュニケーション」
- さまざまなメンバーが参加する横断プロジェクト。「チームビッグローブ」が実を結ぶ
- 横断プロジェクトだからこそ可能!「みんなで変えられる喜び」がモチベーション
- BIGLOBEのCXを極めていきたい!明確な目標を見据えて活動を継続中
CXの外部調査が予想外に低迷。問題点はどこに?解決のために発足したプロジェクト
―――今回はBIGLOBEで取り組んでいる「CX向上全社プロジェクト」のプロジェクトオーナーの土生さんと、ワーキンググループ(以降WG)のリーダーから代表して内藤さん、長田さん、そしてプロジェクトの事務局から三浦さんにお集まりいただきました。まずは、プロジェクトの概要を紹介していただけますか?
土生:「CX向上全社プロジェクト」は全関係部署から部長と主要メンバーがアサインされた全社横断型のプロジェクトです。今回、この取材に参加している「カスタマージャーニー・調査分析WG」「お客さま対応WG」「サービス品質WG」以外に、「プロビジョニングWG」「サービスWG」「法人WG」があり、合計6つのWGで「顧客体験を徹底的に見直す」活動を行っています。さらに、この活動を社内外に情報発信するためのサブWGもあるなど、かなり多数の関係者が携わっています。
―――この全社横断プロジェクトが発足したきっかけを教えてください。
土生:2023年に行われた外部機関の調査で、BIGLOBEの主力商品である光回線の顧客満足度が予想を下回ったことがきっかけです。自分たちが期待していたほど「顧客満足度」が上がっておらず、高品質であるはずの商品がお客さまに十分に伝わっていないという現実が浮き彫りになりました。経営層がこの結果を重く受け止めたことが背景にあります。
時期を同じくしてその年に現社長が着任して、社内の事業リーダーが招集され、社内課題を改善する横断プロジェクトを検討することになりました。その際に私を含めた部長4人で「CX向上」チームを発足したところ、多くの賛同が得られ、半数近くの部長がメンバーとなるチームが発足したんです。その後「CX向上全社プロジェクト」が正式に発足し、私がプロジェクトオーナーとなり、体制づくりと役割分担を刷新して、現在の活動に至っています。
―――このプロジェクト活動により、ビッグローブ光のWeb申込み時に開通工事日の予約を取れるようにしたり、接続設定ガイドを分かりやすくしたりなど「CX向上」のための改善を実施されてきたと思いますが、プロジェクト発足の当時はどのような状態だったのでしょうか?
土生:BIGLOBEでは、サービスの種類やサービス提供までのフェーズが多岐にわたるため、各担当部署は担当範囲が細分化され、縦割り組織の中で最適化されてきました。いわばサイロ化されていた状態と言えると思います。
そういった状況を打破する横断的活動を開始したのですが、プロジェクト発足当時は着手すべき活動も手探り状態でした。とにかく最初は「お客さまの声を確認しよう」と、アンケートの結果や問い合わせ状況、クレームなどを確認することからスタートし、まずは、最もお客さまがお困りになっている接続までの手続き関連や、通信品質問題を改善することに着手しました。そして今は、その「ピンポイントの改善点」を「線」で結ぶカスタマージャーニーの改善を、関係部署を巻き込んで作成しています。
浮き彫りになった「事業者目線」。求められる横断の最適化と「お客さま目線」の追求
―――ここからは、それぞれのWGの活動についてお伺いしたいと思います。内藤さんがリーダーを務める「カスタマージャーニー・調査分析WG」はどのような活動をされているのでしょうか?
内藤:特に主力商品である光回線開設に注力して、顧客体験を各フェーズに区切って可視化することで、カスタマージャーニーにおけるさまざまな問題点抽出に取り組んでいます。加えて、それに関連する各種調査や分析を行うことが私たちのミッションです。
―――問題点の抽出ということはまさに「CX向上全社プロジェクト」の基点となる活動ですね。どのように進めていったのでしょうか?
内藤:具体的なフェーズは、「認知」→「検討」→「申込」→「決済登録」→「工事日程調整」→「工事」→「接続設定」→「利用開始後」→「解約」となりますが、その各フェーズにおいて関係する全部門の実務担当者にヒアリングすることからスタートしました。
まずは、事業者の立場から考えられる各フェーズでの問題点、私たちは「痛点(つうてん)」と呼んでいましたが、まさしくお客さまにとって「イタい点」を細かく抽出して、言語化・一覧化していったんです。そこから見えてきた課題を共通認識し、それぞれのWGの課題へと落とし込んでいった形ですね。
―――具体的に見えてきた課題にはどういったものがありましたか?
内藤:掘り起こしていくと当初の想定よりもさまざまな課題が出てきました(笑)。特に目立ったのは、良かれと考えて提供しているものが、お客さま視点に立つとわかりづらいものとなっているというケースです。
たとえば、お客さまに丁寧にお伝えしようとするあまり、各フェーズで同じような内容を繰り返し説明していたり、担当者が異なるため説明に統一感が欠けていたりといった問題が浮き彫りになったんです。そういう重複や統一感不足は、結果としてお客さまの不満につながってしまいますよね。
さらに、我々のアピール不足も課題の一つで、回線品質の良さが十分に伝え切れていない側面も見えてきました。そういった課題を各WGへフィードバックして改善を図っています。
―――まさに先鋒的な役割を果たされたんですね!他にはどのような活動をされたのでしょうか?
内藤:先ほど「事業者の立場から」と言いましたが、「お客さまの立場から」という視点を今一度見つめ直しました。具体的にはお客さまに実際にインタビューをしたり、他社サービスを実際に申し込んでみてBIGLOBEと何が違うのかを体感したりもしたんですよ!また、自社サービスを利用している社員との座談会もやって「本音ではサービスのどこを不満に思っている?」ということも聞きました。普段言えなかったことも言えたりして、大変盛り上がりました(笑)
他にも各フェーズの部門ごとに、他社比較の個別調査をしている場合もあります。そういう情報も提示してもらい、社内での情報共有を強化していきました!
予想以上の回線速度への不満。対策は「伝える努力」と「お客さまとのコミュニケーション」
―――それでは長田さんがリーダーとなる「サービス品質WG」の活動についてお伺いします。どのような課題に取り組まれたのでしょうか?
長田:実は、インターネット通信は、それ自体では差異化は難しい領域なんです。ところが今回のプロジェクトで、「BIGLOBEが遅い」「他社に比べて通信設備の増強をしていない」などの声が複数あがってきて、改めてビッグローブ光の通信品質向上とそれをお客さまに伝えていく必要性を感じました。
関係部門が集まって状況把握をした結果、お客さまの関心が高いと思われる「通信品質」と「安定性」に特化して、まずは改善を進めていくことにしました。
―――「通信品質」と「安定性」について、どのような気づきと対応策をとられたのでしょうか?
長田:もともと私の本来の業務は、BIGLOBEの通信を支える基幹網の増強です。他社と遜色ない設備を整えていますので、通信網自体が問題ではないと考えていました。しかし、設備増強に関する情報が、お客さまに十分に伝わっていないことが明らかになり、運用を見直したんです。このことで、私自身「やって当たり前」ではなく、「正しく伝える努力」の必要性を痛感しましたね。
また通信品質に関してですが、BIGLOBEの通信はIPv6方式に対応しており、通信速度には自信があるにもかかわらず、ビッグローブ光を新規導入したお客さまの2割強で通信速度に低下がみられるという調査結果が出たことには衝撃を受けました。
この2割強を改善するために、結論として「お客さまの宅内環境改善に積極的に取り組む」という施策に転換することになったんです。
―――新しく開通したにもかかわらず速度が出ないとはどういうことでしょうか?もう少し詳しく教えてください!
長田:「通信速度が遅い」原因は、実際にはお客さまの宅内環境、たとえばパソコンやルータにあることがほとんどです。簡単に言えば、通信自体は高速でも、それに対応していない機器や設定では速度が出ないということです。
IPv6通信は、工事日の数日から1週間後にBIGLOBE側で「IPv6オプション」の設定を行うことで利用可能になり、お客さまにはメールで完了報告と確認依頼を行っています。そのメールにはIPv6に対応できていない場合の対処方法も記載されていますが、そのアピールが不足していました。そもそもメールを開かない場合も考えられます。
そこで、これまで「お客さまの宅内環境についてはBIGLOBEは立ち入らない」というスタンスで線引きしていた方針を見直し、現在は積極的にお客さまとコミュニケーションを取り、宅内環境改善に取り組む方針に転換しています。
さまざまなメンバーが参加する横断プロジェクト。「チームビッグローブ」が実を結ぶ
―――土生さんが兼務されている「お客さま対応WG」の活動について教えてください。
土生:カスタマージャーニーの分析結果から、顧客接点を刷新する必要があることは明白でした。そこで、コールセンターに寄せられるお客さまの声を細かく分析し、必要な改善を洗い出していきました。
改善対象範囲は、Webの入会ページ、会員サポートページ、FAQ、入会されたお客さまに届く紙の入会セットや設定ガイドなど、非常に多岐にわたりましたが、全社から関係者を招集して改善対応にあたりました。特に、長田さんからの話にも出た「IPv6通信に関わる設定」については、お客さまにしっかり伝わるように、WG内で何度も検討を重ねて作り上げました。
さらに、これら一連のCX向上活動を積極的に発信することで、BIGLOBE社内の意識改革とCX醸成を進めています。具体的には、「お客さま対応WG」配下にサブWGとして「社内外への情報発信WG」を設置し、CXに関する活動内容や改善した成果なども積極的に情報発信しています。詳細については、次号の「BIGLOBE Style」でご紹介しますので、お楽しみに!
―――他のWGの活動についても、簡単に教えてください。
土生:「プロビジョニングWG」は、お客さまが光回線の開通をストレスなく進められることに特化して検討し、カスタマージャーニー・調査分析WGと連携して活動しています。「サービスWG」は、お客さま向けのサービスの企画機能を担っていて、新サービスの企画のほか、セキュリティなどのオプションサービスの改善やマイページをより使いやすくする取り組みを行っています。最後に、「法人WG」では、法人向けのサービスの推進を担当しています。
―――なるほど…各WGが主体となりつつも、「チーム」としての連携も重視されて活動されているんですね!
三浦さんは事務局としてこのプロジェクトに参画されていますが、どのような役割を担っていますか?
三浦:この「CX向上全社プロジェクト」は関係者の数が多く、特に経営層とのさまざまな調整が必要です。関係者のスケジュール調整や毎月開催される報告会議への参加と議事録の作成、各WGから出てくる資料の取りまとめや共有、発表資料の準備など多岐にわたるサポートをしています。
いろいろな方とコミュニケーションをとりながら、プロジェクトを支えるいわば「影の司令塔」(笑)という位置付けです!
横断プロジェクトだからこそ可能!「みんなで変えられる喜び」がモチベーション
―――非常に和気あいあいとした雰囲気がこの場からも伝わりますが、みなさんのモチベーションとなっていることがあれば教えてください。
長田:やはり成果が実感できることが原動力です!お客さまの宅内環境改善に積極的に取り組んだ結果、IPv6通信の利用率は上がりましたし、お客さまからもアンケートで「通信速度が早くなった」「快適になった」という声をいただいているのが嬉しいですね。
三浦:私はこのプロジェクトに事務局として参加して、会社の理解がさらに進むなど、自分自身の成長や楽しさを感じます。たとえば、今までは理解できていなかった問題の背景に「縦割り組織」があったことに気づき、そしてあるべき姿をみんなで模索して作りあげていく達成感がモチベーションになっています。
内藤:私はBIGLOBEに約20年勤め、BIGLOBEへの愛着も深いと自負しています。しかし、SNSでBIGLOBEのお客さまからご不満や苦言を発信されているのを目にすると、満足できるサービスを提供できていなくて申し訳ないなと心を痛めつつも、なす術もなく受け身でいることが歯痒かったんです。けれども、このプロジェクトに参画し、CX向上に繋がる成果が少しずつでも出てきたことで、「変えられない」ではなく「変えられる」という自信につながりました。さらに、BIGLOBEにはまだ多くの「伸び代」があると感じています!
土生:私はプロジェクトオーナーの立場から、参画してくれているメンバーみんなのモチベーション維持と向上に気を配っています。なにしろ参加人数が多く、みなさんそれぞれ本務を抱えながらこの横断プロジェクトに参加していますので、どれだけ士気を上げられるかが重要です。さらに、異なる部門からの参加者間で意識のズレが生じないよう、細やかな情報共有やミーティングを設定するようにしています。
内藤:WGのリーダーとして、参加メンバーには本務に加え業務を増やして申し訳ないという葛藤もあるのですが、聞く限り意義とやりがいを感じてくれているように思います。やはり「あるべき姿」を描けて、それを実現できるというのがメンバーにとって最大のモチベーションなのでしょうね。
BIGLOBEのCXを極めていきたい!明確な目標を見据えて活動を継続中
―――会社をあげてCX強化に舵を切ったと思いますが、その方向性についてどう捉えていますか?社内の雰囲気はどう変わったでしょうか?
土生:経営層の「BIGLOBEのCXの課題に正面から向き合う」姿勢が、社内の潮目を変えてくれたと思います。「外部調査機関で顧客満足度1位を獲得する」という大きな目標を掲げ、プロジェクトを後押ししてくれています。
これまでは「問題があるけれども、現状では解決できない」と諦めていたことが、「改善できる、CXを前進させることができる」という前向きな状況に変わりつつあると思います。全社一丸となって「BIGLOBEファンを増やし、サービスをより快適に、そしてご満足いただいて使ってもらいたい」という想いを持ちながら、CX向上に取り組む機運が高まっていると感じています。
三浦:CX向上の活動は、一度やったから終わりではなく、継続していかなければいけない活動だと思うんです。今、地道な活動が実を結び、ようやくマイナス部分を回収できる地点に立っていますが、これからの活動でよりプラスアルファな体験をお客さまに提供できるように、「CX向上全社プロジェクト」の活動を支えていきたいです。
―――みなさんの士気とパワーを感じました。「チームビッグローブ」での今後のCX向上活動に期待しています!ありがとうございました。
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