BIGLOBEの「はたらく人」と「トガッた技術」

BIGLOBEが人事制度を刷新!「全世代活躍型」へのモデルチェンジ。その狙いとは?

BIGLOBEでは、旧来の人事評価制度を2023年4月に刷新しました。新人事制度のコンセプトは「全世代活躍型」。今回は、改革の背景や目的、新人事制度に込めた思いを、人事部メンバーの熊谷、中川、永井に話を聞きました。並行して進めている人事施策についても併せてご覧ください。

(左から)

熊谷 淳(くまがい じゅん)
コーポレート本部 人事部 人材開発グループ グループリーダー

中川 亮(なかがわ りょう)
コーポレート本部 人事部 人材開発グループ

(オンラインにて参加)

永井 ひな乃(ながい ひなの)
コーポレート本部 人事部 人材開発グループ

「全世代活躍型」人事制度へのモデルチェンジ。一人ひとりが能力を発揮し、事業の成長へつなげる

 

——早速ですが、今回刷新した人事制度について教えてください。

 

熊谷:今回の人事制度改革のコンセプトは、「全世代活躍型」へのモデルチェンジです。これまでの人事制度は「役割=等級制度」で、いわゆるジョブ型の要素がありました。しかし、長年の運用を経て目的が曖昧になり「ある程度の年次になれば順序よく昇格する」という年功序列型の部分が残っていたんです。

そこで新しい人事制度では、年次の若い社員でも能力を発揮して成果を出せば、早期昇格や役職への登用が可能なものにしました。制度上、新卒1年目からでもグループリーダー(一般的な課長クラス)をお任せすることもできます。

また、ベテラン層についても、ずっと同じ等級に留まるのではなく、何歳になろうとも能力の発揮具合に応じて等級が変動します。

つまり、若手でもベテランでも年齢に関係なく、活躍に応じて等級・評価・報酬が決まることを狙いとしたのが「全世代活躍」の意味合いになります。

このコンセプトに基づいて、等級資格制度、評価制度、報酬制度の見直しを行いました。

 

—— このタイミングで改革を行った背景をお聞きしてもよろしいでしょうか。

 

中川:日々、変化が大きくスピードが早くなった現在のビジネスでは、「人」が会社や組織の競争力を生み出す時代と考えています。当然、BIGLOBEもこれまでにないほどに外部環境の変化にさらされており、「これまで通りにやっていればいいや」という姿勢では勝ち残れません。これまでは、年功序列型の人事制度でも経済が成長していれば会社自体は存続できていたと思いますが、今はそれが難しい。変化の激しいビジネス環境で戦うには、素早く柔軟に対応できる組織の在り方が求められます。

私たちが目指すのは、BIGLOBEの社員一人ひとりが才能を余すことなく発揮することで競争力を生み出し、スピード感をもって企業の成長につなげることです。

そのような背景から、旧来の人事制度を一掃し、若手からベテランまで『全世代の一人ひとりが活躍できる』というコンセプトの人事制度へモデルチェンジしました。

 

資格等級制度の大幅変更。見直しのポイントとは

 

—— まさに人的資本経営の実現に向けた改革ですね。見直した制度について具体的な内容を教えていただけますでしょうか。

 

中川:最もインパクトのある改革が資格等級制度で、見直した要点は大きく2つあります。

1つ目は「これからの人材観」と「等級の考え方」を再定義したことです。これまで曖昧だったポリシーに対して「BIGLOBEではどのような人が期待されているか」を言語化しました。

これからの人材観は、BIGLOBEで働く全員を「プロフェッショナル」と捉えます。これは、職人になれということではなく「専門能力を保有するだけではなく”発揮”して事業や経営にプラスの影響を与える人」ということです。

そして等級は「ステージ」と捉え直すことにしました。ステージは6段階の”期待値”に分けられています。その期待値に対して、発揮された能力やパフォーマンスに基づき社員それぞれに相当するステージが変動する仕組みを構築しました。

等級の呼び方を「ステージ」に変えたのにも理由があります。従来の運用は、「人」に「等級」がついてしまっていました。その考え方を逆にして「このパフォーマンスや能力発揮の具合だと、このステージにいる」という捉え直しをしたかったんです。「あなたの”能力発揮”は今ステージ1相当ですね、ステージ2相当ですね」というように。
そう捉えることで、今いるステージの期待値能力をきちんと”発揮”してもらい、より高い期待値を発揮できる人はステージが上がり、発揮できなければ下がるということがわかりやすいかと思います。

 

熊谷:2つ目は、旧来の「等級=役職」から、「等級(ステージ)」と「役職」を分離したことです。

これまで硬直的な役職のポストが設けられていた結果、「ポストがないから昇格できない」「年次が若くまだ昇格していないのでマネジメントに登用できない」「マネジメント志向ではないために昇格を諦める」といったことがありました。

等級(ステージ)と役職を分離することで、「マネジメントスタッフ」への早期登用、マネジメント以外のキャリア形成、戦略に合わせた柔軟な組織編成が可能といった効果を狙いとしています。(下図参照)。

「すでに組織にある文化」と「新しく作りたい文化」をよく見極める

 

永井:例えば、優秀な若手や中堅がいても、数年をかけて昇格して、来年の試験に合格しないとマネジメントのポストにつけないということがなくなり、マネジメントスタッフへの登用が可能になります。

裏を返せば、マネジメントスタッフを担ってみて、仮に向いていなかった場合には、マネジメントスタッフではなくプレイヤーとして活躍することもできるようになったので、よりチャレンジしやすくなったのではないかと思っています。

 

熊谷:今このジョブ(役職)をしていても、やらなくなったら外れるといったように、マネジメントスタッフとしてずっと留まるのではなく、臨機応変な対応もできるようになりますね。

 

永井:ひとことで言うと、「パフォーマンスや発揮された行動が報われる制度」になっていると同時に、「本人の目指したい道で頑張れる」設計になっています。価値観が多様化する社会で、当社においても全員がマネージャーを目指す時代ではないということを踏まえて制度設計をしました。

 

熊谷:その通りですね。キャリアには人それぞれ多様な志向があるので、その課題解決の糸口となればと思います。

 

中川:経営の目線ではどうかと言うと、組織内の人の流動性を高め、柔軟な対応ができる仕組みなので、よりスピーディに適材適所を実現しやすくなりました。例えば、この事業戦略だとこの布陣がいいはずだというフォーメーションが組みやすくなります。実際に、4月の組織編成では制度を活用した新任のGLが生まれており、柔軟性とスピード感は高まっています。

また、マネジメントスタッフは「ジョブ型」ですが、プロフェッショナルスタッフにおいては厳密なジョブ型ではなく、その要素をいれつつも軸にあるのは「職能型」制度です。そこは、BIGLOBEの雰囲気や慣習に合わせつつ革新性を意識しました。
世の中で「ジョブ型」が流行していますが、それが組織になじまずうまく行かない事例もよく見聞きします。「すでに組織にある文化」と「新しく作りたい文化」をよく見極めないといけないと考え、無理に全面的なジョブ型にはしなかったんです。

中川 亮

中長期的にキャリアを形成できるBIGLOBEで、長く活躍して欲しい

 

—— 新しい人事制度に込めた社員に対するメッセージがあれば教えてください。

 

中川:BIGLOBEの社員は社歴の長い方が多いので、そこを踏襲して、長く勤めてパフォーマンスを発揮して欲しいな、と思っています。BIGLOBEは2、3年で転職する会社というよりは、中長期的にキャリア形成が可能な会社です。今回、評価制度についても評価ポイントを積み上げ式とし(*)、明確な基準を設けました。そこには「仮に多少失敗したとしてもリカバリーができる仕組みなので、短年の評価で右往左往しないで欲しい」という意図もあります。
* 評価結果により付与されるポイントが基準に達することで昇降格となる

 

熊谷:「長く勤めて欲しい」というところでは、定年後の継続雇用の処遇も将来に渡ってBIGLOBEで活躍できるように改善しました。継続雇用になると報酬が大きく下がるという点を見直し、継続雇用という契約にとらわれることなく、「役割の大きさ」や「パフォーマンス・発揮された行動」によって報える制度を導入しました。

 

中川:新しい人事制度を利用して、ぜひ長く一緒に働き、活躍いただきたいですね。

 

BIGLOBEのカルチャーと革新性の融合を実現。全世代からの納得感を意識した制度づくり

 

—— 少し視点を変えて、人事制度を刷新するまでのプロセスについてお聞きします。大変だったことや意識していたことはありますか?

 

永井:人事制度改革プロジェクトのスタートから約2年。議論に議論を重ね、ようやくここまで辿り着くことができました。

 

熊谷:たくさん議論しましたね。経営層とも早期から議論を重ね、「いま変わるべきだ」という総論は一致していたので、ほとんど大きな壁にぶち当たるということはなく、意見の相違もありませんでした。

 

中川:作り方としては、最初から完成図があったわけではなく、一つひとつの課題を経営層へヒアリングを行い、アジャイル的に修正を重ねて、最終的な形にしたというイメージです。

 

永井:完成までのプロセスでは「制度をいくら綺麗に作っても、共感を得られなければ使ってもらえない」という目線は常にありました。どうしたら腑に落ちるだろうか、頑張ろうと思ってくれるだろうかなど、要所要所で落とし込んでいきました。若い世代、ベテラン世代のそれぞれの目線や、経営の目線、全てにおいて納得のいくような仕組みにするにはどうするか、という議論が熱かったです。

幸いにも人事制度改革に参加しているメンバーは30代から50代までと幅広い年齢層だったので、それぞれの目線から議論できたのが良かったと思います。

 

中川:新しい制度への理解と共感をしてもらうために、全社員と役職者向けの説明会を2カ月かけて本部ごとに計24回行いましたよね。質疑応答など双方向で対話できる機会を設け、結果的に問い合わせは60件強ありました。質問内容は詳細を問うものが多く、答えられないような質問はなかったので、概ね共感いただけたのかと思っています。

 

熊谷:社内ポータルにも、いつでも説明動画を見られるようにアーカイブを置いています。誰一人置いてけぼりになることなく、社員が一体となって良い人事制度を作っていけるようなコミュニケーションを心がけました。

 

中川:総じて「全世代活躍型」というコンセプト、制度自体に大きな反発はありませんでした。前述のとおり、BIGLOBEのカルチャーに合わせながら、少し革新性を持たせたところも功を奏したのだと思います。

明確な評価基準が生み出す、目標や成果に真摯に向き合う姿勢

 

——ここまでお話を聞いて、評価への向き合い方もますます重要になると感じました。

 

熊谷:これまで納得感が得られなかった原因のひとつに、相対評価への理解の少なさがあったと思います。これまで上司の裁量で判断していた昇格も、明確な基準(前述の評価ポイント積み上げ式)を設けたことで、より評価への意識が出てきましたね。

 

永井:昇格の判断基準が分かりにくいことが課題だったので、そこを明確にしたことで社員の納得感を高められたかと思います。

 

中川:そうですね、これをきっかけにマネジメントスタッフもプロフェッショナルスタッフも「一人ひとりが目標や成果に対して真摯に向き合わないといけない」「待っていても評価はついてこない」ということが明確になったのではないでしょうか。

 

熊谷:その支援の一環で行っているのが、「目標設定研修」と「評価者研修」です。
部下は、明確な目標を立ててどれだけ能力を発揮できたかを上司に理解してもらえるように、また、上司は、部下に対して納得のいく評価とフィードバックを行えるようになることを期待して実施しています。

 

中川:能力があるだけではなく、どれだけ”発揮”できたかがポイントです。

 

永井:新制度説明会でもそこは重要ポイントとして伝えました。ぜひ能力を発揮して成果、評価につなげて欲しいですね。

 

人事制度だけじゃない。強い組織になる秘訣は、対話を重ねること

熊谷 淳

—— 人事制度改革と並行してさまざまな人事施策を打ち出されていますが、いくつかご紹介いただけますか。

 

熊谷:目標管理と並行して行っている人事制度のひとつですが、これからのキャリアを設定する『セルフキャリアプランニング』を昨年から実施しています。一度立てたプランは、毎年自身を振り返って再設定でき、プラン達成のために何ができて何が必要なのかを都度上司と話しながら軌道修正を行っていきます。

 

永井:マネジメント志向の有無も『セルフキャリアプランニング』の設問で聞いています。

 

熊谷:成長意識の醸成という視点でも「会社や人事に言われたから研修を受ける」という受け身ではなく、自律的に取り組める風土を目指しています。そのため最近始めたのが、社員同士がお互いに持ち合わせている知識を教え合う『Biglober to Biglober(BIG2BIG)』という取り組みです。「みんなで教え合って学んで成長しよう!」という雰囲気を作ることで、より一人ひとりが力をつけ、能力を発揮できるのではと思っています。

 

中川:そうですね、社員が自律的に考えて動ける組織になるといいですね。

 

「Biglober to Biglober」イントラ掲載画面
リアルプレゼンのアーカイブはイントラ上へ設置

——社員の自律を促す面白い取り組みですね。その他にも、これまで不透明だった給与テーブルや標準年収などの情報も公開されましたが、どのような効果を期待していますか。

 

永井:「情報のオープン化」は、当グループで掲げた2022年度のテーマでした。今回刷新した評価基準同様に、給与テーブルなどの公開についても社員の納得感を意識したもので、処遇の妥当性が高まるのではないかと考えています。

 

中川:給与テーブルはキャリアアップを考えるひとつの足がかりになるので、公開後は「キャリアが見えない」という相談が減りましたね。

 

熊谷:キャリアについては『セルフキャリアプランニング』を本人も上司も有効に活用して適材適所を見極められたらいいですね。

 

永井:そうですね。そのためにも、いろいろな経験を積めてチャレンジできる環境を作りたいという理想はあります。

 

熊谷:この4月から、現場目線で適材適所を判断いただく役割として、各本部にHRBPを配置しました。とはいえ自分のやりたいことは発信しないと始まらないので、まずは1on1などで上司に伝えたりコミュニケーションをとることで、HRBPもうまく機能していくことを期待しています。

 

中川:そうですね。人事制度を変えただけでは強い組織にはなれません。そのような『セルフキャリアプランニング』や1on1など、『社内の対話を今以上に増やす』ことで、より一人ひとりが活躍できる組織となり、企業が差別化されると思っています。その中で、社員からのフィードバックを制度でもうまく拾える体系を作っていけたらと思います。

——今回の人事制度改革が会社にどのような変化をもたらすのか、今後が楽しみです!本日はありがとうございました!

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